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今日も一日が始まる。

「シルヴィオ・ブォナロッティ」
「ふぁ…はぁい。」

朝の点呼に訪れたジョシュアに欠伸交じりに返事をすれば、キリッとした表情は崩れて苦笑気味に話しかけられる。

「まだ眠いのか?」
「寝るのが生きがいみたいなもんだからねぇ…くぁ…」
「本当、お前がここにいるのが不思議なくらいだよ。ほら、起きろ。寝る前に飯食ってこい。」
「はーい。」

牢の鍵を開け次の房へと点呼を取りに行くジョシュアに片手をひらひら振って、間も無く鳴り始めた点呼完了のブザーを耳に食堂へと歩いていけば訪れた軽い衝撃。
肩に回った腕を伝っていけば、眩いくらいの金髪を持った幼馴染が見えた。

「はよ、シルヴィオ。」
「はよ、ジャン。…そろそろ風呂に入れ」
「そんなに臭う?」
「くさい。肩組むな、離れろ」
「ひっでー、そこまで言わんでも。」
「言われたくなかったらシャワー浴びてこい」

いかんせん昔から犬猫のように風呂を嫌い、小さい時は一緒に入っていたが、流石に大人になってからはそんな面倒は見れず放置をかましていれば、自分の気が向いた時ぐらいにしか入ろうとしないジャンにイラッとして、バスルームへと蹴り飛ばすなんて何度した事か。特に趣味とも言える脱獄癖を繰り返し、帰ってきた直後なんかは有無を言わさず服ごと風呂場に突っ込んだもんだ。
つまんない事で収監された先に偶然いたコイツは、やはり風呂へ入る頻度は少ないようで、そろそろ匂いがキツくなってきた。
近くに寄ることでよりいっそう強くなる匂いに眉根を寄せれば、ふんふんと自分の匂いを嗅ぐジャンにそう告げ、肩に回った腕を下ろさせる。
たわいもない話をしながら、食堂へ向かい今朝の朝食を受け取ると、席についてそれを食べ始めた。

「そういえば聞いたか?」
「何を」
「ウチの幹部様大集合ってハナシ」
「嘘じゃなかったのか」
「みたいだぜ、いくつかの房が清掃されたってよ」
「ふーん」

パンをちぎって、味の薄いスープへと浸しながら食べる。
そうすりゃ話し始めたジャンからは、先日から噂されていたCR:5幹部全員の収監の話がされる。
CR:5幹部全員の逮捕、収監。それはこの刑務所内でもトップニュースだった。通常上の人間が何かやらかせば代理で下っ端の俺たちのような人間が収監されるか、あるいは揉み消されるのが常にも関わらず今回はそのどれもがなされずに幹部様がこのきったねぇムショに入ってくるなんて、普通じゃ考えられない。
何者かが裏で手回ししているとしか思えないが、それは俺の管轄外。
俺のような下っ端は幹部様と仕事上の直接のやりとりはない。ここで刑期までただひたすら、毎日同じ事をこなすしかないのだ。

「興味なさそー」
「だって直接のやりとりねぇもん。お前は若干あるんだっけ?」
「一人だけな。よく親父の付き合いで見てたんだ」
「ふぅん、じゃあ話せる相手が一人増えたわけだ。よかったな。」
「やだ、嫉妬してくれんの?そんな心配しなくても俺の本命はお前だけだぜ?」
「カーヴォロ、言ってろ阿呆。…じゃあな、俺は先行くぞ」

またな、なんて言葉を聞きながら食べ終わった食器をトレイごと持ち上げて返却口へと向かい、絶好の昼寝スポットへと足を向ける。
今日はどこがいいかな、なんて考えている俺はこの時には思いもしなかったのだ。

まさかこの先のドタバタ劇に自分が巻き込まれるなんて。






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