短 | ナノ






竹谷 八左ヱ門


「ただいまー」
「千景ねぇちゃん!おかえんなさーい!」

 学校から返ってきた私を迎えたのは、愛犬でも、母でもなく、隣の家の八左ヱ門くん。先日誕生日を迎えて4歳になった彼は、大川学園の幼稚舎に通っている。
 いつもどこかを探険しているからか、髪の毛はいつもボサボサで、可愛いひざ小僧には絆創膏が一つ。動物をこよなく愛する可愛い彼とは生まれたときからのお付き合いをしていて、幼稚舎の友達を除けば歳が一番近いからか、よく懐いてくれている。姿を見付けるとまるでかるがもの親子のように跡をついてくるその姿は…うっとうしい?まさか!むしろ可愛すぎてどうしようか悩むくらいだ。

「はっちゃん。どうしたの?」
「千景ねえちゃんに会いにきた!」
「あれ、今日なにかあったっけ?」
「いーから、こっちきて!」

 ローファーを脱ぐと、腕を引かれてリビングに通される。室内へ足をいれると、母からおかえりと迎える声。それにただいまと返せば、ここにすわって!とはっちゃんに命じられる。
 それに抗うことなく、ローテーブルに手をつけて座る。ちょっと待っててね、はっちゃんは私にそう告げた後に母から何かを受け取るような仕種をして、それは後ろ手に隠して隣にぴったりとくっついて座ってくる。

「あのね、千景ねえちゃん」
「うん、なぁに?」
「これ、あげる!」
「…これ、私?」
「うん!」

 差し出された白い画用紙には、人の顔。聞けば私の顔だという。でもなぜ私?と思って母に目線を向ける。

「はっちゃん、今日幼稚園でお絵かきの時間があったのよ」
「いやうん、それはわかる。」
「それね、テーマがあったのよ。」
「テーマ?」
「そ。 はっちゃん、なんでこれ描いたんだっけ?」

 そうすれば、俯いてうんと、えっとと言葉に詰まらせるはっちゃん。そんな姿もまた可愛い。もうマジはっちゃん天使。しばらくすると意を決したのか、頬を少し赤く染めた顔をこちらにむけた。視線が交わる。

「あのね、せんせいがすきなひとをかけっていったの。 だから、おれ、千景ねえちゃんのことかいたんだ!」

 破顔一笑、まるで向日葵のような笑顔で言われたその言葉に、思わず抱きしめた。


かわいすぎるの、あなた
(ありがとーはっちゃん、大事にする!宝にする!!)
(えへへーねぇちゃんだいすき!)
(私もはっちゃん大好き!!)




―――――
5ろの日記念の竹谷八左ヱ門くんでした。

タイトル:ポケットに拳銃
(2013.05.06)
(2013.10.27.再投稿)
[back]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -