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5-2


 それはいきなりの事だった。

 一年は組の摂津のきり丸が、アルバイトに出たまま帰ってきていない、そんな話を先生達がしているのを小耳に挟んだ生徒によってそれは学園中に広まった。
 どこかで道草でも食っているのだろう、それが大抵の生徒が思う、話を聞いての感想で。だが、食事時になっても食堂に彼の姿が見受けられない事や、それを見なかった者は、いつも一緒に行動している二人が元気がないことから、彼がまだ帰ってきていないのではないかとここで漸く心配する者や先生方、出入門の確認を行っている事務の小松田秀作に聞きに行く者。彼の身を案じ不安に駆られている者達を宥める者。と行動がわかれ、そうこうしている内に、先生方によって組まれた捜索隊が学園を出ていった。
 そうして出発してから、少しばかりの時間が経ち、片方の道から人影が見える。怪我でもしたのかそれとも疲れて歩けないのか、きり丸を背負った土井先生が帰ってきたのだった。

 きり丸を背負ったままに学園長先生の庵へと足を向け少しすると、きり丸は保健室か自室に置いたのであろう土井先生は再度学園の門を潜り、外へと出ていく。きっとまだ近くにいる他の先生方を呼び止めにいったのだろうと思っていた。
 きり丸が帰ってきたことに安堵し、彼が自室と保健室のどちらにいったのかと二手に別れて探しにいった後輩達の姿を見送り、長屋へと戻ろう、誰かがそう言った時だ。

 感じたことの無い気配が二つ、学園内に近づいてきたのは。

 曲者か、その気配の元を探る。そうすると、先程出ていった土井先生がその曲者と思われる二人を学園内へと招き入れる姿を捉えたのだった。

 此処は一般人には知られる事の無い否、知られてはいけない学び舎であることは教師である土井先生自身が何よりも知っているはずだ。安易に一般人をいれる訳はないだろう。ならばこちらの関係者かと考えるが、そんな気配は微塵も感じられない。ならこれはどういう事なのだろうか。
 南蛮の服に身を包まれる男が二人、入門表にサインをして学園内へと入る。小松田さんと二言三言話した後に土井先生に従い、学園長の庵の方向へと歩いていく。土井先生は何がしたいのか。何故そんなことをするのかを知るためにも、後をつけていくのだった。



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