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さて、どうしたものか。
話は少し前へとさかのぼる。
きりちゃんと土井さんの申し出を聞きいれてくれた大川さんによって、この学舎へと泊まる事が決定した俺達は、土井さんの案内のもと空き部屋へと案内をされた。
そこでは、ここでの寝具の使い方やきりちゃんや森の中であった者たちが来ていた衣服、小袖と袴というらしいが、着替え用に二人合わせて数点とパジャマ代わりの白い寝着の着方などを教えてもらった。
今日はもう食堂が閉まっているために、簡易ではあるが夕飯をもってくるので部屋で待っていてほしいと土井さんに言われ部屋で待っているのだが。
「主…」
「ううん、」
部屋に入ってからというものの、姿は見えずとも視線を感じて仕方がない。ランサーが言うには、この学舎へ入った時から少しづつそれは増えているのだとか。
なにかをされるわけでもなく、ただただ視線をやられるだけ。それだけなのだが、
「…落ち着かないなあ。」
「では、」
「ああ、駄目駄目。なにかされているわけじゃない。手を出すな。」
聖杯戦争がなくなった今、英霊として扱わずに貴方を守る一騎士でありたいと熱望され、あまり気は進まない(だって俺はそんな大層な器ではないのだ)もののそれを了承したらこれだ。
部屋を出ていこうとするランサーの行動を止めた。危害を加えられているわけではないのだから、こちらが手を出すわけにいかないだろう。ですが、と食い下がるランサーにいいから、と制す。
「その変わり、何かあった時は頼むから。」
それで勘弁してくれ。