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3-3


 聞いていた名前と、呼ばれた名前の違いに困惑しながらも、一先ず警戒は無くして良いのだろうと思い、背中にきりちゃんを背負ったまま相手へと近寄る。

「この、馬鹿もん!皆に心配をかけて…!」
「うう、悪かったよ土井先生…ごめんなさい。」
「私だけじゃなくて、は組の連中に言ってやれ。」
「はぁい。」

 先生と呼ばれていたからには、きりちゃんは生徒になるのだろう。だが、それだけではなさそうな、親密さが伺える雰囲気に頬が緩んだ。

「あの…きりちゃんの先生?」
「あ…えぇと、あなたは?そちらのかたも。」
「あぁすいません。私、森の中で迷っているところで、足を痛めたきりちゃんと会いまして。森を抜けるついでに、送らせていただきました。彼は私の連れです。」
「そうでしたか。 足を痛めたって…きり丸、なにがあったんだ?」
「あ、あはは…」

 ん?と詰められれば、逃げ場が無くなったきりちゃんは諦めて山賊に会ったことを告げる。聞き終わった途端顔を青くしながら、胃の辺りを押さえて土井先生?はこちらに顔を向けた。

「本当に、本っ当に有難うございました!!」
「いいえ、私も森を抜けれて助かりました。」
「なあ先生。俺、お兄さんに街へと案内しなきゃいけないんだけど…」
「その足で何をいうか!」
「でも!俺を助けてくれたその代金として、やらなきゃいけないんだ!」

「―あぁ、その事だけどきりちゃん。」

 どうしたら行けるのかを口頭説明してくれたらいいよ。

 今時珍しく律儀な子だなぁ、と関心してしまった。そんなもん忘れて、先生と帰ったって良いのに。そんな事を思いながら、背中のきりちゃんに告げると、え、という声が上がる。

「いや、ちゃんと道になっているところまでこれたから、あとはもう説明してくれれば、このまま歩いて向かうよ。」
「でももう夜だぜ?手元を照らす火もないし、着いた頃には宿だってしまってるかもしれない。野宿は危な…くはないかもしれないけど、何が出るかなんてわからないのに!」
「うん、でもそれしかないだろう?」
「ちょ、ちょっと待ってください!貴方本気で言ってます?」
「えぇ勿論。…あぁ、彼は腕っ節には自信がありますので、万一教われても心配はありませんよ」

 俺の発言にひどく慌てたのはきりちゃんだけではなく、目の前の先生も同じだったらしい。うんうんと考え込むような仕種をしながら、顔をあげた。

「少し、待っていていただけますか?」
「え?」
「きり丸をおいたら、すぐに戻りますので。よろしいですね?」
「…は、い。」

 形こそそれだけど、疑問形じゃなかった。待ってろっていう副音声が聞こえたよ!
 そう言うと俺からきりちゃんを受け取って、先生は来た道を走っていった。

 …とりあえず。

「休もうか、ランサー。」

 なれてない山道を歩くのは、流石に疲れた。



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―――――
ランサー空気過ぎてごめんなさい。

(2013,0328)






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