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3


 ただ単純に驚いた。
 あんなにひょろっとしてる人が、鍛えられている山賊達に勝ってしまうなんて。

「さて、お待たせしました。案内、よろしくお願いしますね。」

 にっこりと笑って、いつの間に現れたのか解らない人と俺に近寄って来る。
 ひょろりとした人は未だ地に体をつける俺に向かって、手を伸ばす。その手を借りて足に力を入れれば、瞬間痛みが走る。どうやら転んだ時に運悪く足を挫いたようだ。

「…どうかしました?」
「いや…」

 手に手を重ねて一向に動かないのを不思議に思って問い掛ける人に口を籠もらす。せっかく銭いらずで助けて貰ったのに、案内できないんじゃ払わされるんじゃないだろうかなんて考えてしまう。人から見れば些細なことでも、銭が発生するか否かは俺にとっちゃあとても大事なことなのだ。

「いっ!」
「やっぱり。足痛めてるのか」

 どうしようかと悩んでいると不意に足に痛みが蘇ってくる。思わず声をあげてしまえば、触った張本人はふむ。とかなんとか言っている。ていうかああどうしよう、バレてしまった。折角いつもよりも多く稼ぐことができたのに。
 心の中でうなだれていると、よしっという声とともにいきなり背中を向けられる。

「え?」
「乗ってください。家まで送ります。」

 山賊達と同じような台詞なのにどこか意味の異なるのは、下心がなさそうだからか。え、え、と声をあげていれば、早く。と急かす声。

「あの、いくら…」
「は?…あぁ、別にそんなの取りませんよ。」

 俺達は道が知りたいだけなんで、と次いで出てきた言葉を信じようと、痛めた足に負担をかけないようにして立ち上がり、目の前の背中へと倒れ込む。

 よいしょ、なんて年寄り臭い言葉に思わず笑った。



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