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2-3


 生い茂る草木を掻き分けて進んでいくと、見えて来たのは四つの頭。助けを願った人の姿はきっとこの四人で隠れて見えないのだろう。
 助けて。なんて声が聞こえてきて無視することはできないし、ついでに情報も掴めるかもなぁ。そんな思いで、こちらに気づく様子のない男達に近づいて声をかける。

「こんにちわ。ちょっとお聞きしたいんですけど、ここって何処ですか?」
「あん?」

 振り向いて出来た隙間には、幼い女の子の姿。きっとこの子が先程の声の主だろう。彼女からもこちらの姿が見えたのか、驚いた表情をしている。

「いやぁお恥ずかしいことに道に迷いまして。見ての通りの場所ですから、人もなかなか通らないでしょう?どうしたものかと悩んでいたら、物音がしたものでこちらにきたら貴方がたの姿を見つけまして、それでお声をかけさせていただきました。」
「兄ちゃん、南蛮の人間か」
「南蛮?……アー、そうです。外から来ました。」

 南蛮という古めかしい言葉に疑問を感じながらも答えると、男達は互いに目くばせをする。少し待つと一人の男がこちらへと声をかけてきた。

「道を教えるのは良いが…それなりの礼はあるんだろう?」
「ふむ、そうですね。教えて頂いておいて何もないのは確かに失礼ですよね。なら…」

 未だ地面に座ったままの彼女に目をやる。すると彼女と目があって、にこりと笑ってみせた。

「街へと案内してもらう代わりに、この人達から君を解放する、なんていうのは如何でしょうか。お嬢さん?」
「!…いいよ、お兄さん。案内してあげるよ。」
「契約成立、ですね。…ということで、お兄さんがた、私は一刻も早く人のいるところへとむかいたいので…」
「は?何言って……ぐっ?!」

 話しかけてきた男の腹に蹴りをいれる。後ろへと倒れ込む男を見て、仲間の男達は驚いたのちに、目つきを鋭いものへと変える。

「手前…なにしやがるっ!!」
「覚悟は出来てんだろうなぁ?」
「はっ、それはこっちの台詞。やられる覚悟はできてます?」

 口端をあげ、鼻で笑えば、頭に来たのか小さな刃を片手に一人の男が襲い掛かってくる。
 そりゃあさっきは怖かったけど、今は女の子を守るっていう役目があるわけで。当然負けるわけにはいかないし、ついでに言えばシリアルキラーよりは全然迫力も何もない。
 先に倒れた男が落とした小さな刃を拾い、降って来る刃を撥ねる。キン、と高い音を立てて持ち上がった刃は再度俺を目掛けて襲い掛かる。

「さっきまでの威勢はどうしたよ、坊ちゃん」
「っ、うるせ、考えがあんの。」

 押されつづけ、気づけば背中に何かが当たる感覚。それを見て笑う男はいっそう大きく刃を振るう。…あぁ漸く考え通りになりそうだ。思わず口角が上がった。
 振り下ろされる刃が自身へと当たる前に、横へと避ける。振り下ろす勢いを止められなかった男はそのまま、先程まで俺の背中にあたっていた木にぶつかった。うわ痛そう。

「おい?! この野郎よくも…」
「いやいや自分でぶつかっていっただけじゃないですか。」
「うるせぇっ!おい、行くぞ!!」

 意識を失った仲間を見て、残りの男達は一斉にむかってきた。さすがに多数で来られては分が悪い。

「ランサー、気失わせるだけね。」
「は?…え、なっ?!」

 名を呼び、現れた彼の姿に驚く面々。できた隙を見逃さずに確実に沈めていくと、案外早くに勝負は着いた。
 最後の一人がランサーの手によって倒されるの確認してから、手にしていた小さな刃を元の持ち主の近くにおいた。そうして、放っていた少女へと近寄る。

「さて、お待たせしました。案内、よろしくお願いしますね。」



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魔術抜くと、白兵戦は普通クラスです。だから複数相手とか無理!て事で、ランサーと分担。
魔術使わない理由は、一般人に見せるのは自分達が危ないから禁止してそうだなぁと。

(2013,0327)






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