長 | ナノ









1-3


聖杯戦争、それは万物の願いをかなえる「聖杯」を奪い合う争い。

数十年に一度、冬木市を舞台に行われる聖杯を求める七人のマスターと、彼らと契約した七騎のサーヴァントがその覇権を競う。

他の六組が排除された結果、最後に残った一組にのみ、聖杯を手にし、願いを叶える権利が与えられる。

勝利のためには、マスターか、そのサーヴァントを倒す。もしくはマスターの令呪を無効化し, 強制的にマスターとしての資格を失わせることが必要となる。 なお、サーヴァントを失ったマスターとマスターを失ったサーヴァントが契約を交わし、再び参戦する事も可能。

――以上が聖杯戦争についての事柄である。


 いやはや、困った。

 こんなところで参加者と会うなんて予想もしていなかった。下手にサーヴァント同士を戦わせるより、叩けるのならマスターを叩く方がいいんじゃないかと思っていたが、それが世の中で今騒がれているシリアルキラーとかなにこの運の悪さ。

 これ確実に俺叩かれる側じゃん。

 空笑いをする俺と違い、令呪を確認したランサーは目を細めた。

「なーもういーい?お兄さんも、旦那と同じようなお兄さんも、二人まとめてこの俺が超COOLで綺麗な芸術品にしてあげるよ!」
「サーヴァントのいない者に手を向けるのは心苦しいが、主に手を向けるならば、このランサー黙ってはいないぞ」
「サーヴァント?よくわかんないけど、邪魔すんなよ、順番にやってやるから。」

 にこにこと今まで笑っていた男の顔つきは、一転して捕食者のそれに変わる。その姿に鳥肌が立った。日本は平和だなんていった奴はどこのどいつだ、畜生。目の前にこんなに危ない奴がいるじゃないか。学んできた事なんて、役に立つのかよ。
 一歩、また一歩と近づく男に対して、後退をする俺にランサーが声をかける。

「主、必ずや貴方を――、主?!」

 続きは、俺が川へと落ちる音で消しとばされる。川岸の近くで足を止めていたのが悪かった。後退している内に縁へと進み、気づかずにもう一歩と足を送り出す。そうして身体は未遠川へと包まれた。
 今は冬、水に浸かってしまえばいかなる防寒着を着ていても意味が無い。冷たいを通り越して、最早痛い。身体を起こそうにも、力が入らない。っていうかあれ、おかしいな。普通縁側ってもうちょっと浅いはずなのに、尻も足もつかない。身体がどんどん沈んでいく。必死にもがいて、水面から顔をだして剣を呼ぶ。

「っ、ラン、サ、」
「主っ!」

 命の危機を感じて、ランサーへと手を伸ばす。掴まれた手、持ち上げられることを期待したのに、それは敵わなかった。
 川の底からなにかに引かれる感覚。ヤバい、そう思ったときにはもう遅く、耳にかすかに届いた水飛沫の音にランサーも落ちたことを知る。
 ぐいっと引き寄せられる身体、頬をかする自分の髪。ランサーに抱きとめられながら、引かれる感覚に抗えず、静かに底へと導かれていく。

 ごめんなさい、ケイネス先生。

 ごめんなさい、姉さん。

 ごめんな、ランサー。

 聖杯、取れないかも。


―――――――――――ちゃぷん、


「うっわあああ、何なに今の!!超ッ超COOLじゃんっ!!!旦那に知らせてあげなきゃ!」

 先程までいた人物達が、川に流されるわけではなく飲み込まれた。静寂がその場を支配すること数秒。そんな不可思議な光景を目にしながらも、男は不思議そうにも怖がるわけでもなく目を輝かせてそう言い放ち、来た道を走って戻っていくのだった。



[top]

―――――
俺得、そして長すぎてごめんなさい
一年くらい前のアニメ放送を思い返しつつなので、エセにもほどがある。

(2013.0320)
(2014.0413)






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -