恋のキューピッド


頼まれ事を断れないのはもはや性分だった。断ることで嫌われやしないかという考えももちろんあるが人の困っている様を見るとなんとかしてあげたいと思うし、それに頼られることが単純に嬉しかった。いつか誰かに馬鹿が付くほどお人好しだと言われたがそれも存外悪い気はしなかったからその誰かが言ったとおりわたしはただの馬鹿なのだろうと思う。
斯くして現在のわたしは恋する乙女たちの間でキューピッド的存在に昇格していた。自分で言うのも何だが割かし誰とでも仲良くできるので恋する片想い女子たちの仲介役になってあげることがいつからか増えていたのだ。とはいえ飽くまできっかけを作っているだけでそこから成就するか否かまでは基本関与しないわけだがこれまでわたしがお膳立てをしてきた人たちは高確率でカップルが成立している。おそらくはただの偶然なのだろうけど、そういったことからわたしは恋のキューピッドとして女子からの高い支持を得ていた。

「他人の世話ばっかよくやってられンな」

面倒だと思ったことは一度もない。だって恋する乙女、かわいいじゃないか。好きな人に近づきたい、好きな人とおしゃべりしたい。なんてきらきらでふわふわなんだ。初々しくて甘酸っぱいあの感じは何度見ても心がくすぐったくなる。それは少女漫画を生で見ているようで、だから彼女たちを応援してあげることは苦ではないし、むしろわたしも楽しんでいるのだ。

「もちろん男子にも協力するよ」
「フゥーン」
「荒北くんもなにかあったらいつでも言ってね、お隣のよしみでいつもより張り切るから!」

興味なさげに肘をつきこちらの話を聞く彼、名を荒北くんという。三年間ずっと同じクラスである彼とは何の縁か隣の席になることが多く、そのおかげで随分と仲がよくなった。そんなお友達である彼にはこれまでみた限り春めいた話がひとつもない。いつだったか、一度彼女はほしいし前から気になっている子もいると話を聞いたことがあったが、それ以来なんにもそういったことは聞かない。お節介かもしれないが彼は顔や口調はとても怖いというか厳ついというかまあアレだがその実とても優しくて気配り上手でいい人なのだ。そんな彼のため友達として気になる子がいるのなら協力してあげたいと思うのは、当然のことだろう。

「…例えばだけどさァ、逆にお前が当事者になったときはどうすんだヨ?」
「わたしが、って、どういう意味?」
「アー、だからァ、名字のこと紹介してほしいって言ってんだけど って言われたらどーすンだっつってんの」
「ええ、そりゃないよ。考えたこともなかったし」
「オメーに対する恋の協力はしてやんねーのォ?」

相変わらずやる気なさげに頬杖をついたまま、けれどなんとも言えない視線と疑問を投げ付けてくる荒北くん。質問の意図がいまいちわからないが、なんとなくその視線が妙に気まずいし予想だにしない問いになんだか急に居心地が悪くなる。

「協力云々はわからないけど、もしそんなこと言ってくれる人がいるなら有難いね」
「ヘェ。じゃあ会ってやンの?」
「そうだね、お話くらいはしたいかな。…てか荒北くん話逸らしてるでしょ?」

すっかり話題を彼のことからわたしのことへ切り替えられてむっとすると、反して彼は口端をつり上げてイタズラっぽく笑って見せた。意味深なその表情に首をかしげるわたしに荒北くんは言葉を続ける。

「逸らしてねーヨ。ちゃんと恋愛相談してっダロ」
「うっそ、どこが」
「…んじゃあさ、紹介してほしいヤツいんだケド」
「え!うん!いいよ、誰?任せて!」
「おまえ」
「え」
「一年のときからずっと気になってたンだよネ。張り切ってくれんだろォ?三年越しのオレの片想い叶えてくんナァイ?キューピッドさん」



五話くらいの中編で考えたけどだるいから一話にまとめたれーと思い詰め込んだら詰め込みすぎて処理できなくなりましたとさ(笑)この人口調意味わからなさすぎるしこのお話は絶対ハヤト・シンカイの方が適役だった。そこはかとないコレジャナイ感………。
ちなみに当初の予定は、頼みごと断れないお人好しヒロインちゃんが周囲の恋愛ばっかり手助けしてて自分のことは丸っきりで隣の席の仲いい相手キャラが好きだという自分の気持ちにも気付いてなくてある日とある女子からその相手キャラとの仲を取り持ってほしいと頼まれそこでやっと自分の気持ちに気付くんだけど断りきれなくて相手キャラに女の子を紹介してそしたら胸が苦しくて苦しくてうんたらかんたら〜っていう流れにしたかった。それを五話、までいかずとも三話くらいでしたかったんですけど今回は失敗に終わりました。いつかリベンジ出来たらちゃんと書きたいです。(((言うだけタダ)))

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