(山口視点)


ツッキーは人付き合いが苦手だ。というよりむやみやたらと馴れ合うのが嫌いなんじゃないか。浅く広くではなく狭く狭くちょっぴり深くぐらいがツッキーのスタイルなんじゃないかと思う。
そんな狭すぎる交友関係の中にありがたいことに俺は入れてもらえてる。ツッキーは頭も良いし運動も出来るし背が高くて女の子にもモテるし俺の自慢の友達。こんな平々凡々の俺には勿体ないくらいだ。だから隣にいれるのはすごく嬉しい。
そして俺にはそんな自慢の友達をひっそりと見守るという使命がある。使命というか、趣味というか、まあそれはどっちでもいいんだけど。毎日ツッキーを見守っているのだがどうもここ最近ツッキーに春が訪れた模様だ。お相手はツッキーの前の席に座る名字さんって女の子。明るくて素直でよく笑う子なんだけど、俺が見る限りツッキーはその子のことが気になって気になってしょうがないらしい。

「うぎゃ!?」
「あっ、ごめーん僕の足長いから当たっちゃった」
「このやろこれで何回目ですか!」

自習の時間、ガタンと音が鳴ったかと思えばそんな言い合いが始まった。さもたまたま当たってしまいましたな感じを装い嫌みったらしく謝るツッキーだが、俺はこの目で見ていた。しっかりと椅子の脚に狙いを定めて蹴飛ばしていたのを。

「当たるもんはしょうがないじゃん。まあ僕のこの悩みは君にはわかんないだろうけど。だってそんな経験ないデショ?」
「ムッキィィ!なにも言い返せないいぃ!」
「ぷっ、ご愁傷サマ」
「哀れむなぁ!」

悔しそうに騒ぐ彼女にツッキーは皮肉った笑みを送っている。さっきまですごくつまらなそうにしていたのに彼女が振り向いた瞬間からの楽しそうな様子ったら、ツッキーわかりやすすぎ。
このやりとりはもういつもの事だ。前を向く彼女に振り向いてほしくて椅子を蹴って、言い争う。ツッキーはツンデレいじめっこ気質なんだ。不器用で子どもっぽい。俺はそんなところも可愛いと思うけど、もし彼女に嫌われたら、とツッキーの恋を応援している身としては少しはらはらする。

「ていうかさ、僕に構ってる暇あるの?自習プリント提出しなきゃなのに」
「なっ、そっちがちょっかい出してきたんでしょ!」
「はぁ?誰がお前なんかにちょっかいかけるんだよ。…それとも解けない問題があったりして」
「うっ…」
「アララもしかして図星?まあ出来なさそうだとは思ってたけど、プリントが出来ない言い訳に僕を使わないでよね」
「そ、そんなつもりじゃ…」

あわわわツッキーがヒートアップしてきた…!名字さん目に見えて落ち込んでるし、仲裁に入った方がいいんだろうか。いやでもツッキー絶対嫌がるよなあむしろ俺に好きな子気付かれてるってわかったらそれこそまずいんじゃ…。

「…で?どこが解んないの」
「…へ?」
「仕方ないから頭の悪いあんたに僕が特別に教えてあげるって言ってんの」
「い、いいの?」
「先生に僕のせいでプリントが出来ませんデシター、なんてあらぬ罪を着せられたら困るし、仕方なく…」
「ありがとう!月島くん!」
「かっ勘違いするなよ、今日だけ仕方なくなんだからな…!」


俺が心配するまでもなかった!さすがだぜツッッキィィィィィ!!!!




ツッキーを見守り隊
山口の名を借りたただの私になりましたすみませんでした(笑)
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -