◎お相手はご自由に




言葉とはおもしろいもので、本来備えた意味だけでなくそれを紡ぐものによっていろんな意味に姿を変える。嬉しさや楽しさ、寂しさや悲しさ、ひとつの言葉にもその時々の気持ちや声音だけで様々なかたちに変化するのだ。

まだわたしが子どもだった頃、長い間同じ学舎で過ごした友が妻を娶ったと聞いた。他の友人らもそれを聞きつけ挙って祝いに行ってやろうなどと楽しそうに騒ぐものだから、わたしも付いていくことにした。久しぶりに会った友はさすがにあの頃よりは老けていて、幸せそうな顔をしていた。

「おめでとう」

そこでわたしは言葉を送った。たった一言だけ。友はわたしの目を見て眉を八の字に下げて笑う。

「ありがとう」

友はそう言った。それはなんでもない、よくありがちな会話であった。わたしは返ってきたその言葉をようく噛み締めてゆっくりと笑みを深める。それを見た友は八の字に下げた眉をようやっと持ち上げて、くしゃりとした笑みを浮かべるのだった。


さて、わたしたちの言葉はどんな意味を持っていたのだろうか。その答えは墓場まで、だいじに持ってゆくとしよう。


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