1痴漢は犯罪です


時々、仕事帰りの電車で一緒になる女生徒がいる。隣りの街にある学校の制服に身を包んでいる地味な子だ。すこしばかりめずらしい銀髪だが、この辺りの街は昔から諸国の人々が集まり、様々な人種が入り乱れて生活してきた歴史があるため過剰に目を引くほどではない。実際、電車の中には、黒、茶色、金色、赤色、桃色、または水色とカラフルな髪色が入り乱れている。ちなみに俺はなんの変哲もない茶色で、目の色も茶色だった。ちらり、と女生徒を見る。彼女の目は黒色だ。黒目がちな丸い目が、なにをするでもなく車窓から外を見ていた。時折、邪魔にならないように通学鞄を引き寄せる。

顔立ちは地味で、気も弱そうに見えた。おどおどした印象はないが、強く押されれば嫌なことでも我慢して受け入れてしまう、そんな性格なのではないか。勝手に想像し、ああいう子が痴漢の格好の餌食になるんだよなあ、と込んできた電車に揺られながら思う。更に妄想する。彼女の後ろに立った脂ぎったおっさんが、芋虫みたいな指で、スカートの上からお尻を撫でる様子を。最初は気のせいかと思って放っておいた彼女が、直に痴漢だと気づき、身を竦める。指はお尻の割れ目を撫で、やがてスカートの中へ潜り込む。やめてください、と訴えるも、あまりにか細い声で、余計に欲を煽る。加虐心を煽る震える声に誘われ、指は下着の中にまで侵入していく。まだ誰も触ったことのない秘裂をいやらしいおっさんの指が……っといけない。下半身が反応をし始めた。この状態で誰かにぶつかったら俺が痴漢扱いされる。

ちいさく息を吐き出した。はっきり言って、俺はああいう子が好みなのだった。なにがいいかといえば、初心な感じと白銀の髪色だ。初恋が隣に住む銀髪の女の子だったせいか、銀髪の子を見かけるとどうしても気に掛かる。エロ雑誌やAVは銀髪の子がいるかどうかが基準だし、付き合う女の子も銀髪の子ばかりだった。つまりは銀髪フェチだ。あの髪に指を差し入れてなでなでしたいなあ。もうすこし長い方が好みだけど、ショートも悪くない。彼女は仕事帰りの疲れた心を癒してくれる存在だった。ちなみにいえば、夜のおかずとしてお世話になったことも多々ある。



その彼女が今日は目の前にいた。いつもより込む電車で、人波に押された結果、俺の体と、彼女の背中が隙間なくぴったりとくっついてる。匂いはあまりしない。さらさらした銀色の髪が眼下にあった。触りたいのを耐える。誰か押してくれないか。それか電車が揺れてくれればいいのに。そんなことを思いながら平常心を装おう。妄想の種にしていた存在がすぐそばにいるという状況はよくなかった。よからぬところがむくむくと大きくなってしまいそうだ。でも折角ならば、という思いもある。犯罪者にはなりたくないから、精々どさくさ紛れに体を触る程度だろうが。こちらに背を向けている彼女の表情は窺えない。電車が大きく揺れ、体が押しつけられる。手の甲がお尻に触れた。スカートの上からだったから、感触はよくわからなかった。彼女の体が一瞬だけびくっと跳ねたがそれだけだ。妄想通り、なにも言わない。もっとも今のは不可抗力だったから痴漢扱いされたら泣く。もう一度、もう一度揺れてくれと願うが電車は一定の振動を保ち、願いを聞きいれてはくれなかった。何故か乾く唇を舌で舐め、静かに息を吐き出す。手の甲で、スカートの上からお尻を撫でるくらいならば許されるのではないか、とその考えが頭を支配していた。

他意はない、ただ単に偶然、手の甲がお尻に当たっただけ。だから、痴漢とは言えない。都合の良い言い訳をして、二三度お尻に触れた。何度か繰り返しても彼女はなにも言わなかった。唾を飲み込む。手のひらをひっくり返して、そろそろとお尻に触れた。これで俺は立派な痴漢だ。はっきりとした意志を持って触られた彼女は、やはり、びくっと体をすくませただけで、後ろを振り返るでも、睨むでもなく、縮こまっている。すくなくとも俺の目にはそう見えた。目の前にある首が赤く染まっている。恥ずかしさのせいだろう。むずむずと欲望が大きくなる。ゆっくりと手のひらを這わせてお尻を撫で回す。肉付きは薄いが、それでも十分にやわらかい。布の感触が邪魔だった。いくら撫で回しても彼女は押し黙ったままで、華奢な体がわずかに震えていた。痴漢にお尻を撫で回され怯えている、その状況を可哀想だと思うよりも先に、もっといじめてみたいという気持が湧き上がった。

一端手のひらを離し、再度手を伸ばす。真面目な性格を窺わせる膝丈のスカートを左手でわずかに引き上げ、右手を忍び込ませた。黒タイツに包まれた太股を指先でなぞり、上へ滑らせる。自分の鼻息が荒くなっていることに気づいたが、止められなかった。やわらかい尻たぶが指に触れる。やわらかい。ふにっとしたやわらかさと、その中に潜む押し返すような肉の感触に興奮した。右手でお尻の感触を味わうようにゆっくりと撫でる。指先がお尻の肉に沈む。むにむにとこねるように揉む。下着のラインを指先でなぞり、黒タイツをひっかく。破れないだろうかと力を込めるが、分厚い布は手強い。彼女はなにも言わず、必死に耐えているようだった。

むらむらした気持がどんどん強くなっていく。黒タイツをひっかく指に力が籠った。もし、この分厚い布がわずかでも破れたら、そこから大きく引き裂くことができる。直接お尻を撫で回せる。しっとりした肌の感触を指先で堪能した後は、下着の横から侵入させる。逃げようと身を捩るが、込み合った電車の中では思うように身動きが取れず、指の侵入は防げない。誰にも触れられたことのない秘裂をなぞられる。首はますます赤く染まり、縮こまって震えて、ただ必死に終わることだけを願って耐える。非情な指は割れ目を押し開き、膣口を探り当てたかと思えば、遠慮なく中に入り込む。唇を噛み締め、零れそうになる声を殺そうとする彼女を弄ぶかのように指が抜き差しを繰り返し、内壁を優しく引っ掻く。そのうちに嫌悪とは違う感情が涌き出し、戸惑う。指は二本に増え、執拗に中を引っ掻き、愛撫する。その頃には逃げようとする気力もなく、為すがままにされている他にない。立っているのがやっとだという風情の彼女を壁に押しつける。性器を取り出し、粘液が纏わりつく秘裂へと押し当て擦りつける。いや、と聞き取れないほどにちいさな声が訴えるも遅い。腰を引き寄せ、お尻をこちらへ突き出すようにさせると、弄られて、意志とは関係なく潤んでしまった膣口へ先端を潜り込ませる。異物を押し返そうとする肉を捩じ伏せるように、無理矢理突き立てれば声にならない悲鳴をちいさく零す。震える体を抱き寄せ、胸をまさぐる。手のひらに収まる程度の膨らみだが、やわらかくて気持良い。欲望を満たすためだけで激しく突き上げ、子宮の中へ精を吐き出す。性器を引き抜けば白い太ももには赤い血が流れ……、と、いつか見たAVが脳裡に浮かぶ。その後は確か、電車の中で痴漢に処女を奪われた女子高生ではない女子高生がショックの余り崩れ落ち、見計らったように口へ性器を突っ込まれるのだった。いつの間にかひとりだった痴漢がふたりに増えていて、電車の中でおっぱいを吸われながら、違う痴漢に挿入されていた。それを考えると、お尻を撫で回すだけの俺はなんと可愛いものだろう。脳内の映像はいつの間にか、目の前の彼女になっている。しばらくの抜きネタは確実にコレになる。

やわらかさの中に固さが残るお尻を揉み、必死に耐えている彼女の赤く染まった耳を見ながら考える。スカートの上から性器を擦りつける程度ならばいいんじゃないか、と。さすがにチャックを開き、生身を押しつける勇気はないが、擦りつけてお尻の感触を性器で味わいたい。ぶっちゃけるならば、電車を降りたあとに、どこかへ連れ込みたい。黒タイツを引き裂いて、下着をずらし、四つん這いにして突っ込みたい。そんなことはできないし、上手く物事が運んでも、震えて怯える女の子を無理矢理に犯すのは後味が悪すぎる。やっぱりこういうのは妄想で終わらせるのが一番いい。お尻は、撫で回しているけれど。ずっと触っているが、いくら撫で回しても飽きなかった。けれど、そろそろ離れた方がいいだろう。もうすぐ彼女が降りる駅だ。

「……ッ痛!」

そろり、と体を離そうとした瞬間、足に痛みが走る。足先を見てみれば、彼女の革靴の踵部分が、俺の靴の先に乗っていた。乗っていたというか、ぐりぐりと押しつけられている。痛い。すごく痛い。憎しみを込めるかのようにぐり…ぐり…とねじ込まれている。慌ててスカートの中から手を引き抜くと、彼女がこちらへ視線を向けた。……怖い。すごく怖い。ぎろり、と殺意を込めた目が俺を睨みつけている。蛇に睨まれた蛙ってこんな気持!と思うくらいには怖くて、身が竦んだ。頬は赤いが、羞恥ではなく、どうやら怒りで赤くなっているようだった。妄想の中の彼女が音を立てて崩れ落ちる。どうもすみませんでした、とその場で土下座して謝りたくなるほどに、彼女の目は怖い。見た目で人を判断してはいけません、と言われたものだった、と学生時代を思い返す。怯えで一歩下がった俺の腕を彼女の手が掴んだ。あれほど怖かった表情は一変してやわらかい笑顔へと変わっている。逆に怖い。

「じゃあ、行きましょうか」

彼女が優しい声で言う。素直に、はい、と頷く。いつの間にか電車は駅に着いていたようで、彼女に連れられて降りた。俺の降りる駅はここではない。彼女が降りる駅だ。痴漢から始まる恋ってないのかな、現実逃避よろしくそんなことを考えていた俺はとある場所に導かれた。駅員さんが一斉に俺と彼女を見る。

「この人、痴漢です」

その顔立ちでこんなに気が強いだなんて罠だ。


:つけ込みやすそう!→痴漢する→突き出される、が基本ルートです。

  
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