君を知る(学パロ)


ジャーファルの唇はやわらかい。
それが、付き合ってから初めて知ったことのひとつだ。どちらかといえば薄い唇が、俺の唇を受け止める時の頼りない感触が庇護欲を掻き立てる。調子に乗って舌を差し入れると殴られる。口づけまでの時間もそれなりに掛かったのだから、舌を入れるぐらい許して欲しいものだ。最初は大人しく口づけをされるままだったが、近ごろでは唇を押しつけるようにして応えてくれるのが嬉しい。嬉しさのあまり腰を抱いてしまうのも仕方のない。無理矢理に体を引き剥がし、頬を真っ赤に染めながら、必死に首を振るう姿にも胸が締めつけられた。ジャーファルは可愛い。これは昔から知っていることのひとつだ。

「だめです。学生の身でありながら、そんな、ふしだらなこと!」

と、言われた時のなんともいえない気持を思い出す。眉を吊り上げ、頬は赤く、潤んだ目で訴えるジャーファルと、今まで積み重ねてきた女との付き合いを考えた。わかった、と素直に頷けば、心底安堵したように体の力を抜く。品行方正な恋人になろうと決心したのはその時だ。
だからといって、触れたい、という欲はなくならない。

「……シン」

名前を呼ぶ声にはいつも戸惑いが混じる。

「なんだ」
「テレビゲームをしないか、と言いましたよね?」
「言った。が、お前はゲームなどしないだろう」
「あなたの隣で見ているだけで十分楽しいです」

本日は、俺の部屋でゲームでもしないか!と誘いかけた。最初はそのつもりだったのだが、ひとりで遊んでもつまらないし、そもそも長年の想いがようやく叶った相手とふたりっきりで自室にいるのにいちゃつく以外の何をするというのだ、と至極もっともなことに気づいたのだった。

「俺はつまらない」

こうしている方がずっと楽しい、と髪の中に手を差し入れ、梳く。くすぐったいのか、肩が跳ねた。ぎゅと閉じた唇に触れるだけの口づけをし、頬にも唇を押しつける。見る見るうちに赤くなっていく頬を見ていると胸が苦しくなった。

想いが実ったといえども、愛おしいという気持は日に日に強くなり、体中に嵐が吹き荒れるばかり。焦燥は強くなり、この華奢な体を自分自身のように扱いたいと欲望が大きくなる。それでも、ジャーファルが望まぬ限りは手出しないと己を戒められるのも想いが実ったからだ。

ただ、その日はいつもより自制が効かなかった。薄く開いた唇の隙間を縫い、忍び込んだ舌を、珍しく受け入れてくれたせいかもしれない。舌を絡めとり、押しつけ、吸い上げても、体を引き剥がそうとする腕はなかった。それどころか、おずおずと舌を擦り寄せてくる。頭の隅で、まずいな、と警鐘が鳴ったが、止める気はなかった。

もっと深くと唇を重ね合わせ、体を抱きしめる。背を撫で、体と体の間の隙間を埋めた。胸の辺りにやわらかく押しつけられる膨らみに血が熱くなる。手のひらを脇腹に移動させ、ゆっくりと上部へ滑らせると、そこで慌てたように体を引き剥がした。

「……だめ、です」

深く息を吸い込み吐き出し沸き上がる気持を押さえつけてから、わかっている、と告げる。

「触れるだけだ」

実際、拒絶されたならすぐに離すつもりだった。心のどこかで拒絶されることを望みながら返答を待つが、ジャーファルは何も答えなかった。ちいさく息を吐き出し、目を伏せる。眦の赤さが期待を煽る。

「……いいのか?」

問いかければ、こくん、と頷いた。欲望が体も心も喰い千切って、狂わせようと画策する。次から次に浮かぶ妄想を押し殺し、呼吸を整えた。手を伸ばし、腹の辺りに置く。そろそろと手のひらを滑らせ、緩やかな曲線を描く胸に触れた。布越しのやわらかい感触に震えが走る。大きさはそれほどでもない。手のひらにすっぽりと収まる程度だ。
気づけば、ジャーファルに覆い被さるようにして押し倒していた。泣き出しそうに目を潤ませ、首を振るう。

「大丈夫、だ」

声を搾り出し、触るだけ、と言い聞かせれば、しばらく不安げに見上げていたが、やがてきつく目蓋を閉じた。深呼吸を繰り返し、無理矢理余裕を作り出す。

「いざとなったら蹴り上げろ」

笑いを含ませて言えば、いざとなったらそうします、と呟く。幼馴染み故か、そういう場合のジャーファルに遠慮はない。幾分か安堵した気持で手を伸ばした。例え欲望に負けても、思いきり蹴り上げられればさすがに頭も冷えるだろう。

手のひら全体で、下から上へと持ち上げるように撫で、包み込むようにした後、ゆっくりと指を動かす。シャツが皺を作った。布越しとはいえ、十分にやわらかい。手を離した後は体の横に肘をつき、胸の合間に顔を埋める。思いきり匂いを吸い込むが、匂いは薄かった。やわらかい感触にうっとりと目を細める。すり、と頬を擦り寄せ、体温と膨らみの感触を堪能する。心臓の鼓動が伝わる。出来ることならば、釦を外し、白い肌に直接皮膚を押しつけたい。

「……あの、もう」

精神力を総動員し、顔を引き剥がした後、腕を掴んで引っぱり起こした。

「どうだ、ちゃんと我慢出来たろう!」

得意げに胸を張れば、はい、と頬は赤いまま微笑む。心臓はいまだ早鐘を打ち、血は滾っていた。それでも、目の前の信頼に満ちた笑みの前ではどうでもよかった。こういう時、満ち足りた気持になる。欲望など瑣末なこととしか思えなくなる。気持が通じ合っていると思えて、幸福な気持になった。それでも、欲望は存在していて精神を苦しめる。

「偉いです」

人の気も知らず、にこにこと安心し切った笑顔で軽く俺の頭を撫でる。そうだろうそうだろう、と言葉を続け、無理矢理に笑みを作った。

「……すみません」

唇は笑みの形のまま、眉を下げる。唐突に謝られ、目を瞬かせた。

「我慢を強いているのはわかっているのですが、無責任に、体を繋げるのは怖くて」
「責任なら取るつもりだぞ」
「それはそれで重いです」

冗談だと思ったのか、肩を揺らして笑う。ジャーファルは真面目だ。それが良い所でもあり、悪い所でもある。この場合は良い所になるのだろう。女の誘いに乗る時、その後のことや、責任などは考えなかった。もちろん最低限の準備や避妊はきちんとしていたが、そこに相手への心からの気遣いや慈しみはなかったように思う。相手の方も、割り切っているようだった。

俺は一度も特定の相手を作ったことがない。それはずっと目の前の幼馴染みを好きだったからだ。いま思えば、一度限りの女にも、ジャーファルにも、随分といい加減なことをしていた。もう二度と、そんな無責任なことはしない。

だが、好いた相手に真摯になるということがこんなにもつらいとは思わなかった。一方的に想いを抱えていた頃と違い、いまはジャーファルも俺を好いているという事実が、理性の檻を緩ませる。いまではない、いつか、その頼りない体で俺を受け入れるのだろうか。快楽で泣くのだろうか。白く細い腕で必死に縋りつくのだろうか。何故、それがいまではいけないのか。

これは一方的な欲望だと自覚している。だからこそ、望まぬ限り触れてはいけないと戒めた。部屋にふたりきりは良くないと今更ながら反省し、口を開く。

「天気もいいことだし、出掛けるか」
「……すぐに暗くなりますよ」
「もうそんな時間か」
「ええ。夕飯はどうしますか?」
「そうだな。何か食べに行くか」
「それもいいですけど、何か買ってきて、一緒に食べませんか」

珍しいな、と言えば、たまには、とはにかむように答えた。


「お風呂どうぞ」

適当に買ってきた総菜を腹の中に納めた後、テレビを見ていたところに声を掛けられた。同棲しているようだと勝手に頬が緩む。

「なに、にやついているんですか」

つれない言葉に唇を尖らせながら、バスルームの扉を開ける。着替えとバスタオルが揃えてあるのを見、更に頬が緩んだ。残念なのは、湯から上がった頃には、ジャーファルは自分の部屋に戻っていることぐらいだ。
ひとり寂しく寝るか、と乱暴に髪をタオルで拭きながら、部屋に戻り、目を見開く。

「なんですか。珍しいものでも見た顔して」
「いや、……」
「お風呂、借りますね」

立ち上がり、脇をすり抜けてゆくジャーファルの腕には自室から持ってきたのだろう着替えとタオルが抱えられていた。ぱたん、とバスルームの扉が閉まる音と、しばらくしてから水音が聞こえてくる。俺はといえば、部屋に座り込み、頭を抱えていた。

一体どういうつもりなのかわからない。いくら気心の知れた仲であるといっても、男女であり、なにより付き合っている。付き合っている男の部屋に、夜、風呂を借りる意図を考えて悶々とする。普通ならばそのつもりであるとわかるが、なにせ相手はジャーファルだ。無責任に体を繋げたくないと言った本人だ。有り得ない。ならば、俺を試しているのだろうか。どこまで堪え切れるかだとか、どれだけ大切に思っているのかだとか、そうことを確かめたくて、こんな理性を試すような真似をしているのだろうか。もし、そうならば、逃げよう。後輩からメールが来て、呼ばれたと言い、部屋から逃げ出そう。さすがに無理だ。手を出さずに過ごせる自信がない。

「ちゃんと乾かさないと風邪ひきます」

髪、と近くから聞こえてきた声に体が跳ねた。心臓に悪い。いつの間に上がったのか、パジャマに着替えて、ちょこんと隣に坐った。

「……泊まる、つもりか?」

声が裏返りそうになる。人にきちんと乾かせと言った割に、乾かし方が中途半端だったのか、髪が湿って、うなじに張りついていた。湯上がりで肌が上気している。同じシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。

「だめですか」

真っすぐに目を見つめて、問いかけられた。駄目に決まっている。さきほど考えた案を口に出し、慌てて立ち上がる。

「本当にあいつはどうしようもないなぁ。でも、可愛い後輩だから放っとけないしな!」
「……シン」

立ち上がった俺の服の裾を、躊躇いがちに掴んで引っ張る。シン、ともう一度名前を呼び、縋るような視線を寄越した。期待が膨れ上がり、次に不安が覆い被さって、なにひとつ言葉が浮かばない。

「頼むから、惑わせないでくれ」

ようやくのこと搾り出した声は情けなく震えていた。

「……頼むから、お前との約束を、守らせてくれ」
「では、これから先、ずっと堪えられますか?」
「堪えたい、と思っている。誠実で、真摯な男でありたいと願っている」
「馬鹿らしい」

人の真剣な想いを馬鹿らしいと微笑みながら言うなど、なんとひどい幼馴染みだ。

「女にだらしなくって、好かれていることに胡座をかいて、いい加減な付き合いばっかりで、幼馴染みの女ともそう長くは続かないだろうと噂されているのに」
「誰だ、そんなこと言う奴は」
「人を振り回してばかりで、いきなり好きだなんて言い出して、私を困らせて、付き合えばすぐに体に触りたがり、呼吸さえ許さないほどに口づけを繰り返し、……ずっとつらそうに眉を寄せて」

震える息を吐き出し、顔を伏せる。指先はまだ服を掴んだままだ。

「……あまりにもかわいそうです」
「かわいそう、は、ないだろう」
「いいえ、本当にかわいそうな顔をしています。こちらまで、苦しくなるくらい」

顔を上げ、じっと俺の目を見つめる。誠実で真摯な目に自分の姿を見つけ、息が詰まった。泣き出したくなるような気持に堪らず、ジャーファルの体を掻き抱く。力を込めて抱きしめれば、苦しかったのか、わずかに身じろぎをしたが、逃げ出す様子はなかった。

「頼むから、これ以上何も言わないでくれ」
「これ以上のことを言わなければ、私の気持は伝わりませんか?」
「わかるからこそ頼んでいる。……これ以上は自分を抑えられない」

ジャーファルは怯えることなく、腕の中に収まっている。すり、と肩に頭が擦り寄せられた。震えが全身に走る。シン、と耳元で名前を呼ばれ、唇を噛み締めた。いまは全ての動きが神経を撫でる。

「……責任取ってくださるのでしょう?」

首筋に、ちゅっ、と唇が触れた。それで十分だった。十分すぎた。押し倒されたジャーファルは、驚いたように目を見開き、俺を見上げている。どんな顔をしているのか、自分ではわからない。ジャーファルの頬は引きつっている。

「あの、シン……?」
「お前が悪い」

言い捨て、手を伸ばす。釦をひとつひとつ外すのももどかしく、乱暴にパジャマの前を引き開けた。

「……ッ!」

慌てて両腕で胸を覆い隠し、顔を真っ赤に染め、口を開く。

「ま、待ってください。いくらなんでも、乱暴すぎます……っ」
「待たない。俺がどれだけ我慢したと思ってる」
「わかっています。だから、だから、あなたにならかまわないと思って、でも、あうう」

ちいさく唸って体を丸める。胸だけ隠せば情欲をそそらないと思っているのか、首と肩は無防備にさらけ出されていた。ごくり、と咽が鳴る。固まったままのジャーファルの首に唇を押しつけ、舌を這わせる。

「あ、灯りを」

消してください、と短く呼吸を繰り返しながら、ジャーファルが乞う。そんな余裕は欠片もない。

「それから、きちんと、ベッドで」
「……そうすれば後は全て俺に任せるか」

逡巡した後、はい、と消え入りそうな声で頷く。短く息を吐き出し、体を引いた。覆い被さっていた体が離れたことで、ジャーファルの顔に安堵が滲む。ほ、と息を吐き出すジャーファルの背と膝裏に腕を差し込み、持ち上げ、ベッドに放り投げる。

「わ……!」

胸を覆い隠さぬように両手首を掴み、ベッドに押しつけた。パジャマの前は大きくはだけ、白い肌と胸が露になっている。

「灯り、を」
「……ああ」

動くつもりはなかった。灯りを消しては体を見ることが出来ない。ずっと見たいと思っていた体だ。幾度、脳裡に思い描き、自分を慰めたことだろう。その体が目の前にある。触れることが出来る。

「見ないでください」
「何故だ」
「は、恥ずかしいからです。胸なんか、大きくもないし、腰だって」

確かに一般的な理想からは遠い。だからなんだというのか。胸が大きくなくとも、くびれがなかろうと、尻に肉付きが薄かろうと、恋焦がれた体だ。他の体では代わりにならない、ジャーファルの体だ。

鎖骨の下に唇を押しつける。すべやかな肌の感触に目を細めた。これから思う存分、触ることが出来る。音を立てながら唇を押しつけ、吸い上げる。白い肌に赤い跡が散らばる。舌を這わせ、甘く噛む。唇で、歯で、舌で、やわらかくそれでいて弾むような肌を味わう。

「シン、シン……!」

咽を鳴らして答え、続けて肌を舐める。

「明るいところではいやです。それに、まだ、準備、が」

胸の合間に頬を押しつけながら、準備は出来ているだろう、と答えれば、身を捩って拘束から逃げ出そうとした。

「全て俺に任せると言ったじゃないか」
「でも、ひ、避妊具もなしでは……」

身を起こし、顔を覗き込めば、頬が赤く染まり、必死な表情で訴えている。

「安心しろ。ちゃんと持っている」

机の引き出しに開けていないものが、と安心させようと言葉を続ければ、眉を寄せた。

「……誰に使う予定で」
「お前に決まっているだろう」
「なら、いいですけど」
「なんなら、今日全て使い切ってもいい」

半ば本気で言ってやれば、思いきり顔を背けた。冗談だ、と笑いながら頬に口づけ、引き出しから箱を取り出し、傍らに置く。コンドームの箱には十二枚入りの文字が踊っている。半分ぐらいならば可能ではないか。幸いにも明日は日曜日だ。なにも休憩してはいけないという決め事がある訳でもなし、いや、俺は大丈夫だとしても、おそらく初めてだろうジャーファルには負担が大きすぎるなあ、あくまで冗談としてそんなことを考えながら、箱を開け、小袋を取り出しておく。

冗談だと笑ってみせたというのに、ジャーファルの眉間には皺が刻まれ、頬はわずかにひきつっていた。もう一度、冗談だからなと言ってやれば、余計に眉を寄せた。どういうことだ。ため息のように呼吸を吐き出される。

「避妊具もある。ベッドに移動もした。他にはあるか?」
「……灯り」

ぽつりとこぼされた言葉は聞かぬ振りをして、再度「何かあるか」と問う。両腕で胸を覆い隠したまま「灯りを消してください」と繰り返すジャーファルの言葉はやはり聞かぬ振りをする。譲る気がないと分かれば折れてくれるに違いない。折角の機会なのだから、体の隅々までさらけ出してほしいし、すべてを焼き付けたい。一歩も引かないというように胸を隠したままの右手を取り、甲に口づける。

「……いいだろう?」
「嫌です」

返ってきたのはにべもない拒絶で、さすがに片方の眉がつり上がる。しばらく無言で見つめ合い、もとい睨み合い、意志の強さを確認するとともに、ふぅーっと息を吐き出した。

「分かって、くださいましたか?」

パジャマの襟元を引き寄せながら、ジャーファルが問う。灯りに照らされた白い肌が目の前にある。なんてバカなことを聞くんだ。そんなのは決まっている。

「……ジャーファル」
「はい」
「俺は我慢するつもりだった。例えどんなに哀れな顔をしていようとも、お前が言うように卒業してから思う存分堪能するつもりだった」
「……たんのう……」
「それなのに、どうぞ食べてくださいと言い出したのはお前だ。分かるか、約束を反故にしたのはお前だ。つまり俺の方に理がある」
「………………じゃあ、やめ」
「お前は可愛いなあ」
「シン?」
「この状況でやめてもらえると思っているのか」

ぐ、と言葉を詰まらせ、視線をあっちこっちに移動させる。唇を噛みしめ、自分の選択を後悔しているようでもあった。罠に嵌った獲物そのものだ。もっとも自分から罠に掛かってきたのだから同情の余地などある筈もない。

「それに、お前だって俺の体を見たいだろう」

なんたって好きな奴の裸だ、と言ってやると、ちいさく呆れたように息をつく。

「……あなたの裸は見慣れてます」

言い返す言葉もない。確かに俺には寝ている間に全裸になる癖があるし、部屋にひとりだと風呂上がりは全裸でうろうろしているし、夏場はほとんどパンツ一丁で過ごしている。ジャーファルも慣れきったもので、部屋の扉を開け、ほぼ全裸に近い俺の姿を見ても何の反応も見せない。それどころか「私だから良いものを、誰か来たらどうするつもりですか」と窘められてさえいた。……確かに見せすぎた。もっと出し惜しみしていればよかった。

「俺は、見慣れていない」

苦心の策として呟けば「当たり前です」と言い返された。いつの間にか、パジャマの前はきっちりと合わされて、肌は隠されてしまっている。

「灯りを消してくれないなら、しません」

つん、とそっぽを向く憎たらしい幼なじみの横顔をねめつけるが、折れる気はないようだった。

「……分かった」

言葉を落とせば、安堵したように体の力を抜き、笑ってみせる。

「ありがとうございます」
「初めてだろうから優しくしてやりたかったんだがな」
「……は?」

どういうことですか、と聞き返す前に体を抱きしめ、引き寄せる。ぎゅうぎゅうと力いっぱい抱きしめると、苦しいのか腕の中でもがいた。だが、知ったことではない。腰に回した手をパジャマの中に滑り込ませ、つるつるとした背中を撫でる。それから腰へ滑らせ、尻の方へと移動させる。

「……っ!」

下着の中に指が滑り込む。手のひら全体が潜り込んだところで、尻の膨らみを揉みつつ、下着ごとパジャマをずり下げていく。

「や、嫌です、ちょっと、なにを……っ」

胸の辺りを叩かれるが、抱き込められた状態では強く抵抗もできないようで、痛くも痒くもない。すこしずつずり下げ、太股の辺りまで下げると、硬直して動かなくなった。抵抗がないと逆に不安になるもので、腕の力を緩め、顔を覗き込む。唇を噛みしめ、顔を真っ赤にして、瞳にはいまにも零れそうな涙を湛えて、さらには俺の胸元を掴んで縮こまっている。反省すると同時に、下半身に熱が集中していき、息が詰まった。脳が桃色の思考で埋め尽くされる。

「……大丈夫だ」

耳元で囁き、抱き寄せていた方の手で優しく体を擦る。同時に太股を撫で、足の間に手を滑り込ませると、体が跳ねた。

「だいじょうぶ、じゃ、ない」

震える声が訴える。確かに性急すぎるかと、太股の内側を撫でるだけに抑え、代わりにパジャマの下を完全に剥ぎ取った。膝の辺りを擦り合わせ、片手でパジャマの裾を引っ張ってすこしでも局部を隠そうとしているが、あまり効果はない。むしろちらちらと見えそうで見えないところが妙にそそる。普段は隠されている足に目を細め、膝や脹ら脛を手で愛でる。思う存分手触りを堪能したところで、ジャーファルを解放してみる。

「…………」

不服そうに睨みつけてはいるが、怖くはない。当たり前だ。

「……もっと気遣ってくださると、思っていました」

恨みがましく呟く姿に苦笑がこぼれる。

「俺もそのつもりだった」

お前があまりにも愛らしくてだな、と言葉を続ければ、さらに目を細めて睨みつけられた。

「……ジャーファル」

手を伸ばし、前髪を掻き上げる。露わになった額に唇を落とし、それから薄い唇を吸い上げた。

「ん、……っふ」

舌を滑り込ませて口腔をかき乱すと、呼吸が乱れる。

「……もうすこし、ゆっくり」

唇を離すと同時に、おそるおそる告げられた言葉に笑みが浮かんだ。分かっている、と答え、再度唇を合わせる。パジャマの裾から手を差し入れ、なだらかな膨らみを包み込む。手のひらにすっぽりと収まる乳房は愛らしい。頼りない膨らみを押しつぶしてしまわぬように、力を調節しながら揉み込む。指の動きによって形を変える乳房のやわらかさに頬が緩んだ。指の腹で乳首を押しつぶし転がすと、ひきつるような声がこぼれる。

「……ん、っ」

首に顔を埋め、匂いを嗅げば体を震わせ、縮こまった。いちいち反応する様に心がくすぐられる。やわく首の皮膚を噛み吸い上げれば、赤い跡が残った。満ちた気持が体を支配して、愛おしさに震える。襟元に指先を引っかけ、今度は丁寧にひとつひとつの釦を外していけば、抵抗はなかった。そのまま舌を滑らせ、膨らんだ乳房を舌でなぞる。

「は……っ、あ」

はむ、と吸付き、舌先で先端を押しつぶし転がす。

「あ、ああっ、……っ!」

一度唇を離し、ジャーファルの様子を窺い見れば、赤く染まった顔をくしゃくしゃにして堪えるように目を閉じてた。他人に胸を吸われるのも揉まれるのも初めてで、羞恥と戸惑いに翻弄されているのだろう。唇の端が持ち上がる。音を立ててしゃぶりつき、吸い上げ、軽く歯を立てた。

「あまり、強くっ、は」

涙声で訴えられては、悪戯心も更に疼くというものだ。愛らしい胸を愛撫しながら、手のひらを脇腹から腰へと移動させ、太股を撫でる。滑り込ませた指で秘裂を何度か撫で、ゆっくりと中へ侵入させた。

「……っ、あ」

ジャーファルは身を固くして、早く時が過ぎ去るのを願っているように見えた。ぎゅっ、と目を閉じ、絶対に開けようとはしない。震える、甘さを含んだ声が時折零れるばかりで、身を縮こまらせ、すっかりなすがままだ。

「ジャーファル」

目を開けてくれ、とささやけば、おそるおそる瞼を開き、俺の顔を見つめる。見つめる目は、涙で潤み、眉根は困ったように寄せられていた。……シン、と震える声が名前を呼ぶ。

「……私、は、どうすれば」

問いかけに瞬きをし、首を傾げる。

「私は、なにをすれば」

膝を擦り合わせわずかに身じろいだジャーファルは、縋るような視線を向け、俺の答えを待っている。おかしくなって、首を振るう。

「なにも。俺の好きなようにさせてくれたら、それでいい。……おとなしく任せていろ」
「ですが、だって、私ばかり」
「可愛いことを言う。俺が気にするな、と言っている。大体、いまだっていっぱいいっぱいだろうに、なにができるというんだ」
「…………」
「ジャーファル、いいから今日はおとなしくしていろ」

はい、とようやくのこと頷いたジャーファルはまた目を閉じ、それから体の力を抜く。今日はともかくとして、一体なにをしてくれるものか考えながら、指を奥に進める。狭い密道は指でもきつく、入り込んでくる異物を押し返そうとうごめく。宥めるように指の腹で肉を撫で、押し進めれば、息を飲む気配がした。

「……痛いか」
「大丈夫、ですから」

頷きを返し、丁寧に指一本で中をこねる。しばらくそうしていれば、すこしずつではあるがやわらかくなってきた。吐息にも甘さが混じり始め、そのことに安堵する。一旦、指を引き抜き、体を離す。短く息を吐き出したジャーファルは目を開け、不安を滲ませながら見つめてきた。
安心させるように笑みを返してから、

「膝を立て、足を広げてくれるか」

と頼む。逡巡のあと、膝を曲げ、そろそろと足を広げる。頬が見る見るうちに赤くなっていった。手で覆い隠そうとするのを押さえながら、広げられた足の間に顔を伏せれば、今度は頭を押さえられた。
「な、なに、するっ、つもりですか!」
「なにって分かるだろう」
「そんなことしなくたって、だい、だいじょうぶ、です!」
「……なにが大丈夫なんだ?」
「いえ、あの、もう、その、いっ挿れるの、かと」

指先で秘裂をなぞり、頑なさを確認する。多少やわらかくなったとはいえ、指とは質量も長さも太さも違うものが入り込むには不足していた。

「大丈夫じゃなかろう。……痛いぞ?」

眉を顰めて言えば、あうう、と唸った後、

「…………恥ずかしいより痛い方がいい、です」

と、目を潤ませながら懇願された。言われた方としては、よくないなぁ、としか言いようがない。

「ジャーファル」
「はい」
「俺はいま、お前の手を縛り、ベッドに括り付けたい気分だ」

しみじみと呟けば、表情を強張らせた。

「今度、反抗したらどうなるかわからんぞ」

……はい、とおとなしくなったジャーファルの頭を撫で、閉じた足を割り開き、その間に顔を伏せ、舌を伸ばす。

「……っん、く」

秘裂を舌でなぞり、中へと滑り込ませれば、体が戦慄くのが伝わった。本当に反応がいい。こんなにも素直に反応してくれるとこちらもやりがいがあるというものだ。舌全体を使い、舐め上げ、舌先で中をつつく。唇で陰核を軽く挟み、吸い上げる。体がびくびくと震え、ひっきりなしに声が零れた。耳に心地よい嬌声を聞きながら、膣口を指で苛める。指先だけを何度か挿し入れし、舌は陰核をちろちろと舐める。もどかしいのか、それとも羞恥から逃げたいのか、腰が浮き、足先がシーツを掻く。頭に添えられた手は髪を掴み引き寄せ、同時に押しやろうと力が籠もっている。嫌なのか、良いのか、わからない。含み笑いをひとつこぼしてから、指を奥に進めた。先ほどよりもっとやわらかくなった肉は指を飲み込み、締めつける。陰核を強く吸い上げると同時に、中に滑り込ませていた指を折り曲げれば、一際大きな声が上がった。

「っああ!もう、もう……っ、シン、シン……!」

名前を呼ばれると弱い。唇を離し、気持良くなかったか、と聞けば、しゃくりあげながら必死に答える。

「よ、かったです、よかったからっ、もう、やめ……っ」

良かったのにやめてほしいと訴える意味がわからない。言葉の意味を考え込みながら、やわやわと指を締めつけてくる肉壁を引っ掻く。そろそろ指を増やしても大丈夫なのではないか。

「……は、ぁあっ、指……、っ抜いて……!」

声はさらに切羽詰まって、頬には涙が零れている。意外と快楽に弱いのだろうか。それとも初めての感覚に混乱しているだけなのか。それはいずれ分かることだろう。

好きな奴の知らなかった部分を知るのは楽しい。嬉しさも感じる。誰も与えなかった感覚を、与えてやれるのも楽しくて仕方がない。気持良さに溺れて、俺なしでは生きていけなくなればいいとも思う。ジャーファルは可愛い。増やされた指で中をばらばらに掻き乱され、ただ翻弄されるしかない姿は胸を甘く締めつけた。嫌々をするように首を振るい、制止を求める声とは裏腹に、肉壁は指を食い、決して離すまいとうごめく。その反応の違いは欲を煽った。

指を引き抜けば、安堵感からかちいさくすすり泣く。傍らに置いていたコンドームの小袋を手に取る。ジャーファルの呼吸が落ち着いたのを確認してから、足の間に体を滑り込ませた。体がぎくりと強張る。顔の横に手を付き、顔を覗き込めば、不安げに視線を上げた。

「……いいか?」

ジャーファルは自分の意志を伝えるように何度も頷き、そろそろと背中に腕を回してくる。か細い声が、優しくお願いします、と懇願し、心をくすぐった。愛らしい、それしか思い浮かばない。軽く唇を合わせた後、体を押し進める。性器の先端が肉に触れる。すこしずつ埋まっていく。

「っ、……あ、あ」

十分に慣らしたとはいえ、指とは段違いの質量はつらいのだろう、苦痛に眉根が寄る。唇を噛み、声を押さえているが、噛み殺し切れなかった嗚咽が零れ、哀れさを誘う。それ以上押し進めるのが怖くなり、途中で動きを止めれば、しがみついてきた。

「……やめないで……ください」

私なら大丈夫ですから、と呟く吐息が胸に触れる。ああ、と了承し、ぐっと押し込めば、息を飲みながら耐えた。ぎちぎちと押し返そうとする肉を掻き分けるように性器を押し進め、中に納める。大丈夫ですから、という言葉だけを頼りに細い体に性器を押し込むのは怖かった。それでも、俺のためにと苦痛を耐え、受け入れようと努めるジャーファルはやはり愛おしい。もっと俺のためにと耐える姿を見たいと欲がもたげる。きつく閉じられた瞼は時折痙攣し、ぴくぴくと動いた。

「収まり、ました、か……っ」

根本まで収めてから動きを止めれば、短い呼吸の間を縫い、必死に問う。頭を撫でてやれば、うっすらと目を開いた。

「ああ、ちゃんと入った」

鼻を啜りながら、よかった、と囁く。しばらくそのままでいれば、呼吸が落ち着き、苦痛も和らいだのだろう、表情から強張りが解けた。

「……あなたのが、私の中に」

ぽつり、落ちた言葉に息を呑む。どこかうっとりとした表情に胸の中が掻き回され、理性が削られる。啄むような口づけを落とした後、動いていいか、と尋ねれば、上目遣いで見つめてきた。

「あの、さきほどから注文ばかり、なのですが、その」
「優しく、だろう?わかってる」

はい、と安心したように頬を綻ばせるジャーファルに唇を落とし口づけを贈りながら、腰を引く。押し込む。ジャーファルの背が仰け反り、声が零れた。

「や、優しく……っ、と……!」
「俺は、優しくしたつもりなんだがなあ……っ」

胸の奥に籠もった熱を吐き出すように呼吸してから、腰を引き、押し込む。今度はゆっくりと。奥まで進めた後、中を抉るように押しつけ引っ掻く。

「あっ、あ、ああ……!」

先端でぐいぐいと壁を押し、指の腹で優しく陰核を摘めば、きゅうっと締めつけられた。だめ、だめ……!と震える声が訴え、しがみついてくる。背中に指先が食い込む。傷になればいい、願いながら、腰を揺らし、打ちつけた。ジャーファルは翻弄されるまま、泣き、震え、揺さぶられている。ああもう可愛くてたまらない。夢中で体を貪る。優しくしようという気遣いの気持はどこかへ行ってしまい、もっとくっついていたい、ひとつに溶け合い、ドロドロになりたいとそればかり。

「……シン、シン……!」

俺の名前を呼ぶ声は甘ったるい。答える代わりに口づけをし、腰の動きを早める。肉の打ち合う音と、甘い声に思考が煽られ、暖かく締めつけてくる肉壁に追いつめられていく。血が下半身に集まり、やがて爆ぜた。射精の感覚に体が震え、息を吐き出す。ジャーファルに覆い被さり、肩口に顔を埋めた。

「ジャーファル……」

名前を呟けば、はい、と乱れた声が答える。体の下のジャーファルも同じように荒く体全体で息をしている。くっついた肌が燃えるように熱かった。性器を引き抜けば、……っあ、と甘さを含んだ吐息が耳朶をくすぐる。体を抱き寄せながら、横になった。いまはすこしでもくっついていたい。体の合間に隙間はなく、やわらかい乳房が胸に押しつけられている。とくとくと心臓の音が伝わった。

「……シン」
「なんだ」
「私、後悔してませんからね」

間近にある顔を見つめてみれば、静かに微笑んでいる。汗が浮いた額に白銀の髪が張りついていた。一房の髪を指先で撫でつけ、そのまま手のひらで頬を包み込む。わかっている、と呟き、口づけた。やわらかい唇が応えるように押しつけられる。何度か軽い口づけを交わし合い、それから何もおかしいことはないのに、ふたりして笑い出した。

「あんなものが入るだなんて思わなかった」

ジャーファルはそう言い、まだ違和感があります、と笑う。どれ、と背中に置いていた手を腰へと滑らせると、ぺちりと手のひらを叩かれた。調子に乗るんじゃありません、とわざとらしく頬を膨らませる。ジャーファルにしては珍しくはしゃいでいるらしかった。それもつかの間のことで、ほぅ、と胸に詰まったものを吐き出すように息を吐いて、静かに口を開く。

「……あなたが幸せなら、私も嬉しい」

丸く黒い瞳が、問いかける。

「ああ、幸せだ」

分かり切ったことを聞くものだ。幸せに決まっている。心だけではなく、体も俺のものになったのだと思えば、いっそ泣きたくもなる。胸の奥が痺れて、あまりの幸福に「幸せだ」としか言えなかった。

「ジャーファル」
「はい」
「……お前のことが好きだ、ジャーファル」

胸の中で幾度も名前を呼ぶ。いくら呼んでも呼び足りない、可愛い恋人の名前。ずっと傍にいて、ずっと見ていた、俺の幼馴染み。白銀の髪も、丸く黒目がちな瞳も、白い頬も、その頬に浮かぶそばかすも、すべてが愛おしい、大切な存在。ずっと触れたかった。触れたくて触れたくて、いっそのこと無理にでも組み敷いてしまおうかと考えたこともある。上手く気持が伝わらず、苛立たしい思いをしたことも一度や二度ではない。いい加減諦めてしまおうとしたことだってあった。もう過去のことだ。

「知っています。私も、あなたのことが好きです。とても」

ふふっ、とくすぐったそうに笑い、胸元に頬を擦り寄せる。

「……何かが、変わってしまうんじゃないかと、すこし怖かったんです。でも、何も変わらない」
「そうか?俺は、変わったと思うが。……いままでより近くなった気がする」
「これ以上は近くなれませんね」
「そうだなあ。お前の中に入ったからな」
「…………」
「……言っておくが、お前が先に言ったんだぞ」

そういう意味じゃない、と拗ねた顔をする。その頬をつつく。

「これからいっぱいしような」

にこにこと笑いそう言えば、ジャーファルが黙り込んだ。じっと俺の顔を見る。薄い唇が開く。

「ねえ、シン。一度許したからといってなし崩しにずるずるとこれからも許すとお思いですか?」
「へ?」
「学業を疎かにして色恋沙汰に現を抜かすような人間になりたくありません」
「それは……、学業もしっかりこなした上で、付き合っていけばいいじゃないか……!」
「それから、私の考えは以前と同じです。ふしだらなことは避けるべきだと思っています。……シン、言おうと思っていたのでいま言いますね。あなた、最近色ボケが過ぎます」
「うぐ、いや、だが」
「ふたりきりの時なら好きなだけどうぞ。でもね、人前では控えてもらえますか?」
「…………ふたりきりの時ならいいんだな」
「ええ。……嫌いじゃありませんから」

あなたとくっついているの、と笑う顔は可愛い。可愛いが、言葉の内容を吟味して、唇を噛みしめる。俺としては、こいつは俺の恋人だ!すごく可愛いんだぞ!俺の!と見せびらかしたいのだが、それはするなと言う。ふたりきりの時なら、くっついて、いままでのようにいちゃいちゃしてもいいと言う。だが、性交はしてはいけない。その肌がどんなに白いか、どんなに手触りがいいのか、知ってしまったというのに。乳房のやわらかさや、あたたかく締めつける中の感触も知ったというのに。あんなにも愛らしく声を零し、切なさにすすり泣く様を目の当たりにしたというのに!またしても我慢の日々が始まるとは思わなかった。そうだ、忘れていた。ジャーファルは一筋縄ではいかない。昔から知っていたことを、今更思い出したのだった。


:はじめて話には気合い入れたい派です

  
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