「ジャーファルさんは、ひどい」
幾度聞いた台詞だろうと思いながらも、どうして?と問いかける。問いかける言葉は、どこが?だったりもしたし、捨てる?だったりもした。シャルルカンは眠たそうに瞬きをした後、手を伸ばして、私の頬を撫でた。指先があたたかった。
「……俺とはこういうことする癖に、王サマには、させてない」
それはひどい、口の中で呟き、唇の端を持ち上げる。シャルルカンは、悲しさと優越感の入り交じった複雑な表情をしていて、私を見つめていた。
「唆してはいるんだけどね」
「どうやって」
「……あなたが望むならば、力づくでも為さればいいのに」
台詞を聞いた瞬間、うわ、と声を落とした。
「ジャーファルさんひどい」
また言った。今度は眉間に皺を寄せて、心底シンを哀れむ顔を見せた。
「そんなこと言ったら、王サマ絶対に手ェ出せない」
唆した時の苦々しい表情を思い出す。もし、シンが唆すままに手を出してくれたなら、私は喜んでその仕事を果たしただろう。王が望むならば体を差し出す。私にとってはそれも部下の務めだ。
私は、王を愛している。愛しているけれど、同じものを返して欲しい訳ではなかった。シンに対する深い愛情を同じ純度でずっと胸に抱いていたい。そのために関係を崩したくない。随分と勝手な話だ。シンの気持を知っていてなお、私はシャルルカンを選んだ。私の頬を撫でるシャルルカンの指は、優しい。それでもいいと甘やかしてくれる。
「そうかなあ。シンにだったら何されてもいいのは本当のことだし」
「……俺には?」
「きみは私に優しくして、甘やかしてくれなくちゃだめ」
「王サマと俺、どっちが大切?」
「シン」
「ジャーファルさんってばひどい!」
そうは言うものの、シャルルカンは安堵したような笑顔を浮かべていて、この子も大概複雑だなあ、なんて思った。

:みんなめんどくさい
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