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キスより甘く囁いて(1/4)

秋もいよいよ深まってきた11月初め



歌番組のお仕事でJADEの楽屋に挨拶に行くと、秋羅さん一人しかいなくて



「あれ、今秋羅さんお一人なんですか?」



何気ない私の言葉に、秋羅さんはタバコを灰皿に押し付けながら苦笑した



「みのり? 何だよ、もしかして俺一人じゃ不満だったなんて言わないよな?」



「もう、誰もそんな事言ってないじゃないですか!」



意地悪な言葉に、私は頬を膨らませて秋羅さんを睨んだけれど



「分かってる、冗談だよ‥‥‥ほら、いつまでもそんな所に立ってないで‥‥‥こっちにおいで?」



その視線を涼しい顔で受け止めて、秋羅さんは私の方に右手を差し出す



「‥‥‥‥っ」



その手に引き寄せられるように楽屋に入った私は、続いて背後で聞こえた内鍵をかける音に、そっと目を伏せた








秋になってから『芸術の秋』にちなんだイベントの仕事がいくつも重なって、本当に目が回るような忙しさだったから



仕事ではあるけど、こうして秋羅さんと顔を合わせるのも久しぶりで



「みのり、会いたかった‥‥」



「秋羅さん‥‥‥私も、私もずっと会いたかったです」



抱きしめられたまま二人並んでソファに腰掛けて、秋羅さんの胸に頭を擦り寄せる



久しぶりに感じたその温もりは、いつも以上に優しくて―――そして



(あれ? もしかして、秋羅さんも私と同じくらいドキドキしてるの?)



そう思った、次の瞬間



私の胸が、早鐘みたいに一気に騒ぎ出した



「みのり? どうかしたのか?」



「あ‥‥‥」



――――どうしよう



秋羅さんも、私と同じくらい私に会いたいって思ってくれてたんだって思ったら



(嬉し過ぎて秋羅さんの顔、見れないよ‥‥)



トクン、トクン



静かな楽屋の中で二人きり



二つの鼓動が同じリズムを刻むのに、私は嬉しいのとと恥ずかしいのでごちゃ混ぜになっていた





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