「愛してる」のその後は?(1/3)
都内の某テレビ局。
歌番組の収録時間がずれ込んで、思いがけず出来た空き時間。
JADEに用意された楽屋には今は俺一人だけしかいなかった。
ずっと忙しかった事もあって、静かな楽屋の中でウトウトしていた時。
コンコン。
「‥‥‥ハイ?」
ドアを小さくノックする音がして、あくびを噛み殺しながら応対に出てみれば。
「あ、冬馬さん‥‥おはようございます!今日はよろしくお願いします!」
完全に『お仕事モード』ではあるけど。
俺が、ここしばらく会いたいのに会えなくて、夢でまで翻弄された恋人の笑顔がそこにあった。
「今お一人なんですか?」
部屋の中を覗き込んだみのりが俺の顔を見上げた。
「‥‥‥ああ、入る?」
「はい!」
俺の言葉に、何の疑いもなく満面の笑顔で頷いてくる。
「何か飲む?‥‥ウーロンなら缶のがあるけど」
二人かけのソファに腰掛けたみのりに問い掛ける。
「あ、ありがとうございま‥‥っ!」
みのりは俺と目が合うと、ハッとしたように顔を背けた。
(‥‥?)
俺、どこかおかしい所でもあるのか?
ウーロン茶を片手に条件反射で自分の体をチェックしてみたけど、これと言って変わった所はない。
「みのり?」
すぐ隣に腰掛けて顔を覗き込むと、彼女はさらに体を縮ませて俺の視線を避けようとする。
「‥‥‥‥‥みのり、どうして俺を見ないの?」
「そ、そんな事‥‥あっ」
みのりのあごにそっと指を添えて、俺の方に振り向かせる。
すると今度はギュッと目を閉じてしまう。
ここまで頑なになる彼女は、初めてだった。
.
[←] [→] [back to top]
|