Darlin' | ナノ


'愛してる'って言わせてみたい(1/5)

「そうよ、みのりちゃん。恋愛って言うけどね、恋と愛じゃまるで違うのよ?」



ここは、私が出演している月9ドラマの撮影スタジオのメイクルーム。



今日の分の撮影が無事に終わって、私はメイクを撮影用から普段のそれに直してもらっている最中だ。



そのメイクさんが監督に呼ばれて席を外している間に、隣の席に座っていた女優さんが私に話しかけてきた。



彼女−笹井真名さんは私より十歳年上で、同性の私から見ても妖艶な色香を持つ大人の女性だ。



週刊誌にも何度もスクープされている、その濃密な恋愛遍歴とさっぱりした性格に女性のファンが多い人。



「恋は見返りを求めるものだけど、愛は与えるものだもの」



男に‘愛してる’と言わせる女になるための努力は女の義務だわ。



(うわ、スゴイなあ……)



サラっと言い切った彼女に、私は感嘆のため息をもらした。



JADEの冬馬さんと付き合う様になってしばらく経つけれど、恋愛初心者の私は駆け引きを楽しむどころではなくて。



むしろ経験豊富な冬馬さんに『子供』だと思われたくないと、いつもいっぱいいっぱいだったから。



「あと、男がベッドで言う言葉は信用しちゃダメよ。特にやる事やる前のは絶対にね。ああもう、みのりちゃんってホントに純粋だから心配だわ〜」



「ベ、ベッド……ですか?」



不意に、先週冬馬さんと過ごした時の光景が思い出されて、自分の頬が上気するのが分かった。



私は連ドラ出演中、冬馬さんもJADEの新曲発売直後で目が回るくらいに忙しい中、何とかスケジュールをやり繰りして。





「みのり……みのり……」



低く艶のある声で私の名前を呼ぶ冬馬さんは、甘く愛を囁くその唇で、その熱い素肌で、やがて空が白み始めるまで何度も何度も繰り返し私を求めた。



(……や、やだ。私ってば何考えて……)



私の体の奥の方が、カアッと熱くなるのを感じる。



思わず両手で自分の体をギュッと抱きしめると、私のその仕種を眺めていた真名さんが堪えきれないという様に吹き出した。



「みのりちゃんは本当に隠し事が出来ない子よね〜。そんな顔してたら、本命の相手がいるってバレバレよ?」



「あ……!」



しまった、と顔色を変える私に、真名さんはまだ笑い続けながら手をヒラヒラと振って見せた。



「安心なさい。私は人の恋愛に横槍を入れるほど野暮じゃないわ。それにみのりちゃんほど素直じゃないしね」



「真名さん!……もう、からかわないで下さいよ…」


唇をとがらせた私を見て、真名さんは、『アラ、私には出来ない顔ね』と言って綺麗な指先で私の頬をつついた。







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