Smile(2/3)
出来るなら、みのり、その笑顔は、俺だけに向けてくれないか。
…だけど、今の俺はきみにとって「プロデューサ−」でしかないんだろう?
あくまで「JADEの春」なんだ。
心の中に、苦いモノが広がって行く。
「神堂さん、どうかされました?」
いつの間にか、物思いにふけってしまっていたらしい。
ふと我に返ると、みのりがキョトンとした顔をして俺の顔をのぞき込んでいた。
「……………!!」
いきなりの至近距離に、思わず体がビクッと反応してしまう。
心臓がドキドキとうるさい。
「うわ、めずらしいモン見た。春、顔真っ赤だぞ」
冬馬が面白がって囃し立てる。
「おい、冬馬。……やめとけって。んな本当の事」
いつもみたいに、秋羅が冬馬を止めてくれると思った。
が、あろう事か、その秋羅までが俺に意味ありげな流し目を寄越してくる。
「なっ…………!!」
「え?……ええ?神堂さん、私、何かしました?」
慌てて俺の方へ、さらに身を乗り出してくるみのり。
いつものポーカーフェイスもどこへやら、顔がどんどん熱くなる。
そんな俺を、冬馬だけでなく、秋羅まで人の悪い笑みを浮かべて、面白そうに眺めている。
夏輝も、顔を真っ赤にして動揺する俺をポカン、と見ている。
どうしてだろうな。
少し前までの俺なら、こんなに取り乱す事なんかありえなかったろう。
無理をしていたとは思わないけれど、今は楽に息が出来ていると感じる時がある。
すべてはみのり、きみと出会ってから。
だけど、こんな俺も悪くはないだろう?
俺を変えたのはきみ。
だから。
きみも俺だけを見て。
誰にも渡したくない。
きみのその笑顔、俺だけの『特別』にさせてくれないか?
→あとがき
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