ひとひらの花(2/5)
いよいよ当日の今日。
休日を春と一緒に過ごせる事なんて滅多にない未来ちゃん達のはしゃぎっぷりは、ものすごかった。
春も私も、未来ちゃんや弟君達の笑顔とパワーに圧倒されっぱなしで、本当に息をつく暇もなくて。
『花火大会の前にシャワー浴びたい〜』という未来ちゃん達と別れてこのスイートルームにやって来たのだって、ほんの30分前の事だ。
「春‥‥‥‥今日は本当にお疲れ様でした」
「‥‥‥ああ」
冗談めかして言う私と、整った顔に少しだけ憮然とした表情を浮かべる春。
しかも。
私と目が合うと、春は拗ねた子供みたいにスッと視線だけを逸らしてしまった。
(えっ!?)
いつも大人っぽくて、落ち着いている春。
その春の滅多に見られない姿に、私はとうとう堪えきれずに吹き出してしまう。
「‥‥‥何?」
春の問い掛けに、私はニッコリ笑って彼を見上げた。
「ううん、何でもないの‥‥ただ‥‥」
そこまで言いかけた私は、口をつぐむ。
「みのり‥‥ただ、何?」
「あ‥‥」
何と答えたらいいか、一瞬考え込んでしまった。
(お兄ちゃんの顔をしてる春が見られて嬉しいとか、拗ねてる春を‥‥‥可愛いと思った‥‥なんて言ったら怒られちゃう、かな?)
「答えてくれないの?」
「え?‥‥きゃっ!」
ふと我に還ると、いつの間にか身を屈めた春の顔がすぐ至近距離で私の顔を覗き込んでいた。
「‥‥‥‥」
驚く私のリアクションをジッと眺めていた春は、しばらくして笑い出した。
(春‥‥?)
とまどう私の視線の先で、春はその整った顔に妖艶な笑みを浮かべている。
「じゃあ、直接聞くからいい」
そう言うが早いか、春は素早く私の肩に手を回してから、私の唇に口づけた。
「‥‥っ!!」
それはホントに突然で、しかもいつになく強引なキスだった。
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