Precious・後編(3/5)
パタン、と何かがフローリングの床に落ちる音がして
「ふにゃっ!」
そのすぐ後に、驚いたような鳴き声が続いた
(え? 今の声って‥‥‥‥まさかっ!?)
密着した態勢のまま固まった俺とみのりちゃんは次の瞬間、弾かれたように体を起こした
「ミィ!」 「ミィちゃん!?」
大人しく寝ていた筈のミィがどうしてあんな鳴き声を上げたのか
とっさに嫌な予感が頭をよぎる
「ミィっ! どうした、何があった‥‥‥‥って、え?」
「ミィ、ちゃん?」
慌てふためいた俺達の見つめる先で
「ふみゃあ‥‥」
情けない声を上げながら、寝そべっていたミィがむくりと体を起こした
その弾みでミィの体の上に載っていたもの――――俺がみのりちゃんから貰った誕生日プレゼントの箱がぱたん、と脇に落ちる
(‥‥‥って、何でそれがミィの上に載ってるんだ?)
首を傾げながら、ミィの元に向かった
確かあれはリビングのテーブルの上、間違っても自然に落ちたりしない場所に置いてあったのに
だが、綺麗にラッピングされていたプレゼントを手に取った次の瞬間
俺は盛大なため息を漏らした
「ミ〜ィ〜、お前なあ‥‥」
結ばれていた青いリボンは半分解けかかって、特に端の一方はくしゃくしゃに歪んでいる
おまけに、ミィの歯型までしっかりついているとなれば―――
「ミィ‥‥‥お前、このリボンを引っ張って遊んでたな?」
「みゃうん」
「‥‥‥‥」
しかめっつらで問い掛けた俺を、ミィは悪びれる様子もなく、キラキラした目で見上げてきた
「だーかーら、これはお前のオモチャじゃないの!」
「ふみゃん‥‥」
「―――まったく」
ふう、と軽く息を吐き出して背後を振り返る
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