俺だけのモノ(2/3)
「‥え‥‥みのりちゃん?」
「‥‥‥‥あ////」
それは完全に衝動的なもので。
目を丸くして私を見る夏輝さんに、ふと我に還った。
「あ、あの‥‥私‥‥んんっ!」
しどろもどろになりながら言い訳しようとしていた私の唇は、夏輝さんの唇に今までにない荒々しさでふさがれてしまった。
背中にまわされた腕は痛いくらいに強く私の体を抱きしめて、頬に添えられた大きな手は私の髪を優しく梳く。
(‥‥夏、輝‥さん‥)
頭の芯がクラクラしてくる頃に、夏輝さんはやっと唇を少しだけ離した。
「‥アレは反則だろ」
私はもう、夏輝さんの腕の中で声を出す事も出来ずに視線だけで問い掛ける。
「‥みのりちゃんは二十歳になったばかりだし、がっつくのはやめようと思ってたんだけど‥‥」
もう限界。
そう呟いた夏輝さんの腕に、もう一度力が込められて。
正面から私の顔を覗き込んで、きっぱりと宣言した。
「みのりちゃん。‥‥みのりちゃんの"初めて""、今日俺に一つちょうだい」
(あ‥‥‥)
お互い見つめ合ったまま、ゆっくりと顔を近づけて‥‥さっきよりは穏やかな、けれど深いキスを交わす。
(‥‥夏輝さん‥‥‥)
春の夜は、静かに過ぎていく。
漆黒の空には、三日月だけがひっそりと浮かんでいた。
→あとがき
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