太陽を抱く夜〜Prologue2〜(3/3)
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
春が横目でチラリと俺を見ているのが分かったが、生憎今はそれに軽口や冗談を返すだけの余裕がない
全部演技なんだと分かってはいる
分かってはいても、さすがに禁欲生活を強いられている今の自分には‥‥‥‥正直かなりキツイ
(重症だな‥‥)
気持ちを落ち着けようと、深いため息を何度か繰り返す
たかがドラマの番宣ひとつで、ここまで動揺している自分が不甲斐なく思えた
(みのりは今や、その演技力を認められた一人前の女優でもあるんだから)
だから、カメラの前に立っているみのりには俺は指一本触れられない
そして
みのりは、俺が惚れた『あの笑顔』を俺以外の男に向けるんだ
「‥‥‥‥‥っ」
ふと気がつくと、いつの間にか半分ほどの長さになっていたタバコのフィルターをきつく噛み締めていた
「‥‥んだよ」
ほとんど吸わないうちに灰になったそのタバコを、八つ当たり気味に灰皿に押し付ける
その弾みで灰皿がガチャン、と耳障りな音を立てるのに春が眉をしかめたが、それも今はどうでも良かった
こんな激しい感情は、みのりと付き合うまで一度も感じた事がない
『いっそ仕事も何もかも放り出して、みのりを俺の腕の中に閉じ込めてしまえたらいいのに』
両腕を見下ろしながら、そんな事すら考えてしまう俺がいる
自分の中にこんなに強い嫉妬心があったなんて、想像すらしていなかった
次にみのりに会った時、俺はとても冷静ではいられないだろうな
そしてそんな俺を見たみのりは、一体どんな顔をするだろう
既に次のニュースへと切り替わったテレビ画面を見つめながら、俺は小さくため息をついた
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110123.
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