太陽を抱く夜〜Prologue2〜(1/3)
〜夏輝SIDE〜
JADEがホテルに泊まりこんでから、もう二週間
曲作りとアレンジ作業もようやく一段落ついて、後はレコーディングを待つばかりとなっていた
とっくに日も落ちて、ホテルの最上階にあるこの部屋の窓からは、眼下にきらびやかな都心の夜景が臨める
俺が今いるのはメンバーが寝起きする部屋とは別の、主にミーティング用として使っている部屋だ
そこで事務所やアルバムの製作スタッフも交えた打ち合わせがお開きになったのがほんの10分ほど前の事
部屋の中央に置かれた大きなテーブルの上には、まだ資料が雑多に積み上げられたままになっている
「はあ、これでやっとレコーディングか‥‥」
俺は、椅子の背に寄り掛かってタバコをくゆらせながらぼんやりと天井を見上げていた
(特に今回はアレンジにかかった時間が長かったからなあ‥‥)
秋羅や冬馬、もちろん俺だって最高の音を作りたいって思う気持ちは誰にも負けない自信がある
けれど今回は、それに輪をかけて厳しい春の満足する音が出来上がるまで、全員が数日間ぶっ続けで徹夜作業する羽目にもなった
現に秋羅と冬馬は打ち合わせが終わった途端、挨拶もそこそこに自分の部屋へと戻って行ってしまった
きっと今ごろはもう、二人とも爆睡しているに違いない
(いや、一人だけいつもと全然変わらない奴もいるな‥‥)
俺が椅子に寄りかかったままだった体を起こしてタバコを灰皿に押し付けた時
「さすがに疲れたか?」
俺の斜め向かいに座って手元の資料に目を落としたまま、春が口を開いた
.
[←] [→] [back to top]
|