狼少年とキスの法則(3/5)
「‥‥‥‥キス」
「え?」
「私からキスしたら‥‥機嫌、直してくれるんですよね?」
冬馬さんは、一瞬驚いてから嬉しそうに口の端を持ち上げた
「そうだな‥‥‥‥じゃあ、それはみのりの頑張り次第って事で」
「もう、そんなのってないです! 冬馬さんの意地悪!!」
「お、いいねえ‥‥それ俺には最高の褒め言葉だし?」
「な‥‥っ」
まだ遮光カーテンが引かれたままの薄暗い寝室に、冬馬さんの笑い声が響く
そして
僅かに緩められた腕の中、私はゆっくりと体の向きを変えた
冬馬さんと、息がかかるくらい間近で見つめ合う
「みのり?」
冬馬さんの、私の頬に添えられているのとは逆の腕が背中に回されて
その瞬間を催促するように力が込められるのを感じて、私はそっと目を閉じた
「ん‥‥はぁ‥あ‥‥っ」
「みのり、最高に可愛い顔してる」
「‥‥‥それ、また『冗談だよ』とか言わないですよね?」
僅かに唇を離して上目遣いで見上げた視線の先で、冬馬さんが苦笑する
「やれやれ、うたぐり深いなあ」
「それだけ日頃の行いが大事だって事ですよ‥‥‥あ」
しまった、と思った時にはもう遅かった
私の言葉に、冬馬さんの片眉がピクッと跳ね上がる
「へえ? じゃあ、みのりはどっちだと思うの?」
「だからそれは‥‥その、ですね?」
「はい残念、時間切れ〜」
「‥‥‥っ!」
――――質問しておいて、答えられないようにもう一度唇を重ねてくる冬馬さんは、やっぱり意地悪だと思う
だけど
そんな彼と付き合い始めて、やがて冬馬さんの家に『お泊まり』するようになって‥‥私はもう、その時を何度目まで数えていたかも忘れてしまった
意地悪な事言って、いつも私をからかってばかりの冬馬さん
悔しいけど、追いつきたくてもなかなか追いつけない、大人の男の人だけど
それでも私は―――
(冬馬さん、大好き‥‥)
心の中で呟いて、私は与えられる甘い熱にそっと身を委ねた
⇒おまけ .
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