アナタと過ごす休日は(3/4)
それから15分後。
「ホラよ、冬馬‥‥頼まれてた例のモン」
「ああ、サンキュ」
注文した飲み物が運ばれてきてやっと喫茶店らしくなった店内で、店長さんがお店の奥から持ってきた小さな箱を冬馬さんに手渡す。
(‥‥例の?)
そしてそのやり取りを首をかしげて見ていた私に、冬馬さんはその箱を差し出した。
「はい、みのり」
「え、ええっ?」
訳が分からずキョトンとする私に、冬馬さんが堪えきれなくなったように吹き出す。
「やっぱり忘れてたんだな?‥‥みのり,誕生日おめでとう」
「あ‥‥」
そう、だ。
最近、ずっと忙しい日が続いていたからすっかり忘れてしまっていたけど。
今日は12月6日、私の誕生日だ。
(え、じゃあこれは‥‥)
「どうぞ、開けてみて?」
「‥‥‥‥っ」
笑顔の冬馬さんと目が合って、私の鼓動が激しくなる。
彼にジッと見られている、と思うとそれだけでドキドキして震えてしまいそうになりながら開けた箱の中から出てきた物は。
「それ、みのりをイメージして完全オーダーメイドで作ってもらったんだ」
その言葉に、私は手の中の物をまじまじと見た。
これは‥‥‥‥卓上スタンド?
繋ぎ合わされた色つきガラスが、ステンドグラスみたいにキラキラ光っている。
そして中には小さな電球がセットされていた。
「貸して」
冬馬さんが電球から繋がるコードを手にとって壁のコンセント口にコンセントを差し込むと同時に、店長さんが店内の照明を落とす。
「う、わあ‥‥‥‥!」
いつの間にか日はすっかり落ちていたらしい。
突然薄暗くなった店内に、ガラスを通して柔らかい光が浮かび上がる。
それは優しくて暖かくて、どこか懐かしい。
そしてその光に照らされた冬馬さんは、とても優しい目で私の事をまっすぐに見つめていてくれた。
意地悪で、よくいたずらもされるけど。
だけど、本当は人一倍気遣い屋さんでとても優しいアナタが大好きなの。
だから。
『だから、これからもずっと‥‥‥‥‥』
帰り道、駐車場に停めている車に乗り込んだ時。
そう言いかけた私の唇を、冬馬さんは自分のそれで塞いだ。
肝心なところを言わせてくれないなんて。
「‥‥‥‥やっぱり、意地悪だよね」
小さく呟いた私にニヤっと笑って、冬馬さんは車をスタートさせる。
「それでこそ俺、だろ?」
→あとがき
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