'愛してる'って言わせてみたい(4/5)
冬馬さんは私の首筋にキスを落としながら、もう一度繰り返す。
「そのフレグランスって……ローズ・アブソリュート?」
「え……ええ …なん、で………知って…?」
スラスラとフレグランスの名前を口にする冬馬さんに驚いて、私はつい起き上がろうとした。
けれど冬馬さんは、その大きな手で私の両手首を掴んで頭上に固定してしまう。
「ちなみに、アドバイスしてもらった女優ってのは笹井真名さん、だろ?」
「………………」
私はもう、冬馬さんをジッと見つめる事しか出来なかった。
「何年か前に、JADEのPVにゲスト出演してもらったんだよ。……まあ、顔を合わせれば世間話くらいはね」
自嘲気味に笑う冬馬さん。
……どういう知り合いか分かった気がする。
チクン、と胸に小さな痛みが走る。
思わず泣きそうになって、慌てて横を向いた。
「そんなの全然知らなかっ………きゃっ……冬馬さ、んっ……!」
「昔の話だよ」
そう言いながら、冬馬さんは私のうなじや首筋に次々と紅い花を咲かせていく。
「みのりと出会って、俺は変われたから。俺はもうこの先ずっと、みのりしか欲しくない」
キスを続けながら、私のパジャマを器用に脱がせて。
やがて冬馬さんの唇は私の胸にたどり着いて、その頂を舌で弄ぶ。
もう一方には、冬馬さんの大きな手が意外なほど優しく、けれどいつもより執拗な愛撫を続ける。
「あ…ん……冬、馬さん……あっ……」
私の目から涙が一筋、流れた。
うまく言えないけど。
真名さんの笑顔が、偽物だったとは思わない。
そして今。
体で、心で感じる、冬馬さんの思い。
『あいしてる』
声に出すよりも強く、どんどん私の中に流れ込んでくる。
やがて私の体はその思いで満たされて、昇華する。
「あいしてるよ、みのり」
冬馬さんがくれた、たった五つの音でこんなにも幸せな気持ちになれるなんて。
今まで、知らなかったの。
ねえ、冬馬さん?
「私も、あいしてます」
→あとがき
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