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触れなば落ちん(1/4)

「小娘」

「・・・・な、なん、でしょうか?」

「お前の着物は、誰が見立てたのだ?」

「え?あ、これは、女将のお登勢さんが・・・」

「ふん・・・」

眉間に皺を寄せ、相変わらずの上から目線

今日は何を言われるのかと、身構えた私を

「出かける・・・少し、付き合え」

想定外の言葉と、大きな手が、捉えた














な、なんだろう、いきなり?

頭の中に、ひたすらハテナマークが飛び交う私にお構いなく

すたすたと歩く大久保さん

その手は、私の手を握ったままで

そのことが、余計に私を混乱に陥れてくれる

決して強くは無いけれど、振りほどくことができない大きな手

こちらを振り向かない背中からは、なんだか急いでいるような気配が漂ってくるのに

引きずられずに歩いていられるのは、どうしてなんだろう・・・



歩くのが早い皆と一緒に居るから、私も慣れてきたのかも



ハテナマークが飛び交う隙間で、そんなことをぼんやりと考えていると


「・・・・ふぎゅっ?」


何かに顔がぶつかって、反射的に上がってしまったのは、我ながら間抜けな声

ふわりと・・・・煙草の残り香が鼻腔を擽った


「何をしているんだ、馬鹿娘」

「ば、馬鹿って!」


いきなり止まった大久保さんの肩に、思いっきりぶつけてしまった鼻の頭を抑えながら見上げると

呆れたように見下ろす二つの瞳と視線が出逢って、心臓が小さく悲鳴を上げる


「前を見て歩くことも出来んのか、お前は」


・・・・むっ!


「大久保さんが、いきなり止まるからですっ!」

「ほお、この私のせいだと言うのか?」

「そ、そうですっ!」


形のいい唇の端が、楽しげに持ち上がり

綺麗な二つの瞳に、意地悪気な光が宿ったのが見え

瞬間、たらりと、冷や汗が背中を流れ落ちた



・・・は、迫力ありすぎるってば、その笑顔はっ!!



繋がれていない方の手が、すっと伸びてきて

長い指に、くいっと顎を持ち上げられる


「相変わらず、小うるさい口だな、塞いでやろうか?」

「え、遠慮しますっ!!!」


って言うか、ち、近いですからっ!!

すぐ近くで私を見つめる瞳から顔を逸らしたいのに

くっくっくっと喉の奥で楽しそうに笑う主の手は、それを許してくれない


「どうした?顔が赤いぞ?」

「〜〜〜っ!し、知りませんっ!!」


近すぎる顔に、心臓はもう、破裂しちゃうんじゃないかって勢いで、騒ぎまくって仕方がない

この人の言葉と行動に、どうして私は、いつも翻弄されてしまうんだろう・・・

自分でも真っ赤になっているとわかるけれど、どうすればいいのかわからなくて

ただひたすらに、視線を彷徨わせていると


「ふん、まあいい」


どこか楽しげに呟いた後、長い指は、ようやく私を解放してくれた


 


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