触れなば落ちん(2/4)
そうして連れて行かれた先は、いわゆる呉服屋さんで
大久保さんの顔を見たご主人は、笑顔で奥へと姿を消した
最近は洋装ばかりだけど、やっぱり着物が恋しくなったのかな・・・
なんて考えながら店内をきょろきょろと見回してしまう私
「きょろきょろするな、みっともない」
「すみません、でも、こんなお店って初めてなんで、珍しくて、つい・・・」
また嫌味が返ってくるかも・・・なんて思うより先に、素直に口をついて出た言葉に
「・・・初めて、か・・・そうか、そうだろうな・・・」
「・・・・?」
小さなため息と共に、ぼそりと呟かれ、またハテナマークが頭に浮かんでくる
何か、ヘンなこと、言ったかな、私・・・
聞いてみたいけど・・・うーん、また馬鹿にされそうな気がするしなぁ・・・
そんなことを考えていると、ご主人が、笑顔で戻ってきて
「こちらですが、いかがでしょう?」
「ああ、いいな」
満足そうな声で大久保さんが見つめるのは、ご主人が手にしている 淡い紫の生地に藤が描かれている綺麗な着物
すごく、綺麗な着物・・・
だけど、これって、どう見ても・・・・
大久保さん用じゃない、よね?
だって、これって・・・・女性用、だよね?
「小娘」
「は、はいっ!」
「行って来い」
「・・・・へっ?」
い、行って来いって、どこにっ?
再びハテナマークが飛び交う私は、にこにことご機嫌な笑顔のご主人に導かれ
混乱したまま、店の奥へと、足をむけることになり
ちらりと振り返ると、なぜか楽しそうな笑顔の大久保さんが、こちらを見つめていた
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