今、思ってる事が同じなら(3/6)
・・・・っ!?
ふいに掛けられた低い声に、僅かに心の臓が跳ね上がり
反射的に視線を向けると、そこにいたのは、人好きのする笑みを浮かべた店の主人らしき男
「奥方?」
「ありゃ、ちごう(違う)とったですか?こいを見とる旦さんの目が、えろう優しかったもんやから、そう思うてもうたんですが」
勘違いやったら、すんません・・・少し申し訳なさそうな声が、耳に届く
優しい目、か
これを見ている時、はづきの笑顔を思い浮かべていたが
僕は、そんな目で、これを見ていたのか・・・
「ああ、いや・・まだ妻では無いが、それに等しい女性への贈り物を探しているんだが」
実際には、まだ僕の妻ではない為、妻だと断言することも出来ず言葉を選びながら告げると
察したらしい主人が、そうですか、と呟く
このぎゃまんは、確かに美しいし、はづきも喜んでくれるかもしれないが
はづきが身に着けるものを贈りたいと思うのは、僕の我侭なんだろうか
小さく息を吐き出しながら、手にしていたぎゃまんを、そっと元の場所に戻した
店先に並べられたものを改めて見回すと、僕が望むような品は見当たらず
知らずまた、小さく息が零れる
別の店で探すとするか・・・
そう結論付け、足を動かそうとしたのと同時に
「あの、旦さん・・・・」
「なんだ?」
「そん方は、異国の装飾品には興味無かとですか?」
「・・・・は?」
異国の装飾品?
唐突に掛けられた言葉の真意が読み取れず、動かそうとしていた足が、動きを止める
僕の様子に脈有とでも思ったのか、ちょっと待っとってください、告げた主人が、慌しく店の奥へと姿を消し・・・
すぐに戻ってきたその手が持っていたのは、いくつかの小さな小箱
「ご主人、それは?」
「こいは、ですね・・・・」
にこにこと笑うご主人が説明をしながら、一つずつ丁寧に小箱の蓋を開けてゆく
これ、は・・・・
蓋を開けて姿を現したのは、柔らかな秋の陽光を受けて、眩しい煌きを放つモノ
その中の一つが、姿を現した途端
「これを頂こう」
「へ?旦さん、そがん早う決めんでも、まだ蓋ば開けとらんのが」
「これがいい、頼む」
迷うことなく、その中の一つを手に取っていた・・・・
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