世界でいちばん。(9/15)
「秋羅、後は俺達に任せろ。 ベースの準備と、彼女を桃瀬さんのところへ」
「ああ…頼む。さ、みのり行こう」
「うん…」
そして、私達は神堂さん達に任せその場を後にした。
「さ〜てと……ウチの可愛い姫と可愛くねぇメンバーの可愛いベースを傷つけてくれたお礼させて貰わねーとな?」
バキバキと手を鳴らしながら凄みのある笑顔で近づいていく冬馬。
「は、姫?…もしかしてアンタも…みのりに惚れてるとか?
メンバーに取られたのに、諦められないとかいうや…ぐ!?」
冬馬がぐいっと宇棹の胸ぐらを掴み上げる。
「…ああ、惚れてるよ。
あんな可愛くていい女、なかなかいねぇからな。
……けど、本当に好きなら相手の幸せを願うのがホントのイイ男ってもんだぜ?
もっとも、秋羅のバカが彼女を悲しませるようなことしたら、遠慮なくかっさらう気満々だけどな。
だから、お前みてーなクズの出番はねーんだよ」
「くっ…放せ!!」
冬馬の手を外そうともがくものの、冬馬の握力は強く微動だにしない。
宇棹の側に、春と夏輝も近づき睨み付ける。
「今回のことは……みのりのプロデューサーとして、お前の事務所に正式に抗議を入れさせて貰う…… 勿論、JADEとしてもな。同じ音楽をする人間として秋羅のベースを傷つけたお前の行為は絶対に許さない。」
「ああ。
……恋人の楽器を盗んで、自分と付き合えなんて女の子を脅すなんてミュージシャンとしても、男としても最低だ!
秋羅のベースの調整が万が一、間に合わなかったら君がやった行為をプロデューサーに報告させてもらう。
君のやった行為は、君だけでなく君のバンド…いや、君の事務所のそのもの信用も無くす行為だ。
もちろん…君の事務所に所属してる他の人たちにも影響を及ぼす。
そうなった時、キミ達の事務所は…デビューしたばかりのキミ達をどれだけ庇ってくれるんだろうね?
先に言っておくけど、この会話はこれで録音させて貰ってる。
JADEのリーダーとして、これを持って明日にでも、君の事務所に正式に抗議を入れに行かせてもらうから覚悟しとけよな!
もし、またみのりちゃんにつきまとってみろ…
マスコミに全部ぶちまけて一般人としても、生活出来ないようにしてやるからな!」
どうやら夏輝は携帯のボイスレコーダー機能で録音していたらしい。
さっすがリーダー!
(けど……本気で怒らせるとマジで怖え〜んだよな〜あんま怒らせないようにしよ)
「は〜苦労して、やっとデビュー出来たんだろうになぁ。
あ〜あ……お前みたいなメンバー持っちゃった仲間カワイソー。
やっぱりメンバー愛って大事だよな〜」
「……本番でキミがどんな歌を歌うのかじっくり聞かせて貰う」
「あ…う…あ…」
ことの重大さにやっと気づいたらしく真っ青になり震えだした宇棹を放り出し、俺達は控室へと戻った。
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