世界でいちばん。(7/15)
ENDの控室を飛び出し、空いている控室や会議室を見ながら…走っていくとみのりの叫び声が、通路奧の柱の陰から聞こえてきた。
「離してっ!!」
「なんで、あんな男に固執すんだよ?
俺の方が年も近いし、無理な背伸びしないですむ分、ラクだぜ?
女とっかえひっかえして、散々、スクープされてたの知らねえワケじゃねぇだろ?
どーせ、あちこちライブとか行った先で、アンタがいないの良いことに女と遊んでんだぜ?
騙されてんだって!
いい加減遊ばれてんだって自覚しなよ
あんな最低の……」
「秋羅さんは、絶対にそんなことしてない!
秋羅さんのこと、何も知らないくせに、秋羅さんのこと悪く言わないで!!
あんたなんか最低よ!……それ以上、秋羅さんのベースに触らないで!!返してっ!!」
最悪の事態になっていないことに安堵しつつも、相手の卑怯なやり口に虫酸が走る。
「……そんなに返して欲しいんならヤらせてくれたら返してやるよ…」
「いやぁっ離して…!」
ガツーンという、重いものが床に落ちた音が派手に響いた。
(野郎!!)
「やめろ!!それ以上みのりに変なことしやがったら、ぶっ殺すぞ!!」
大声で叫び、角を曲がるとみのりが壁に押しつけられている姿が目に入った。
「てめぇ!みのりから離れろ!!」
「秋羅っ!!」
カッとなり、宇棹をみのりから引き剥がし、頬を殴り飛ばそうとしたところに、春の鋭い声が聞こえ、俺の意識を引き戻した。
「ちっ!」
肩を掴んでいた手にさらに、力を込め宇棹を床に転がし腹を踏みつけた。
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