世界でいちばん。(6/15)
(ったく…なんでアイツは相談してこないんだよ…!)
嫌な想像を振り払い、取り合えず相手の楽屋とその周辺から探すために、廊下を走る。
『みのりちゃん、一ヶ月位前から、デビューしたばかりのENDってバンドの宇棹ってヤツに、しつこく付きまとわれてるのよ!
一回、徹平ちゃんが見つけて助けて、
その後は、なるべく一人にさせないように気をつけてたんだけど…
こっちの目を盗んで、言い寄ってるみたいでね…
徹平ちゃんが向こうの事務所にも苦情入れたんだけど……』
「ジェネシス相手じゃ…ラビットさんじゃ、キツいよな…
みのりちゃん、相談してくれれば良かったのに…」
「見つけたら…しっかり後悔させてやるさ…」
「そうそう!俺達の耳に入ったからには徹底的に潰してやらねーとな!」
「秋羅、冬馬…仕事前だ。殴る時は俺が殴るから自重しろ。」
春の冷静な言葉の中に、深く静かな怒りを感じ、少しだけ冷静さを取り戻す。
「……一応、心に留めとくけど…保障はできねぇな」
「……どうしてもやりたかったら足にしろ。
ただし…程ほどにな」
「ああ…」
ようやく、相手の控室を見つけ乱暴にノックし、ドアを開けた。
「うお!?」
「え!?JADEがなんでここに!?」
部屋の中を見回すが、みのりの姿はない。
「おい!…宇棹ってヤツはいるか?」
「え…宇棹は、いませんけど…」
「最近お前らの仲間の宇棹ってヤツが、みのりの周りを彷徨いてるらしいな?
今、みのりの姿が見えない…どうやら、俺のベースも持ち出してくれたみたいでな?
…どこにいる?」
状況を飲み込んだらしいENDのメンバーは、青ざめた。
「あのバカ!なんてことしやがったんだ!!」
「さっき、スタジオに忘れ物取りに行くってそのまま…」
「すんませんっ!!俺達も手分けして探します!!」
そして、JADEはスタジオ近くを、ENDのメンバーは屋上や駐車場等、遠い場所を探すことになり別れた。
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