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わたしの隣、あなたの隣(2/3)



「改めまして…

秋羅さん、誕生日おめでとうございます。また来年もお祝いさせてくださいね?」


言葉と同時に真っ赤な袋を差し出すと、秋羅さんの顔が綻ぶ。


「そっか…これ…」


「覚えててくれたんですね…」


「あぁ、もちろん」


懐かしそうに微笑んで、秋羅さんは綺麗に結ばれたリボンを解いていく。


「今年はワイングラスか」


秋羅さんが箱を開けて呟いた。


スタンダードな形をしたそのグラスを手に取って、光に透かしながら嬉しそうに目を細める、その表情に私もつられて嬉しくなる。


「気に入ってもらえましたか?」


「気に入らないわけないだろ?」


目を合わせてくすくすと笑い合うと、幸せな気持ちで満たされていく。


グラスを片付けて、秋羅さんはテーブルの下でそっと私の手を握った。


「ありがとう、うれしいよ。帰ったらこれでワイン飲もうな」










「乾杯」


小さく金属音を立てたグラスの中で、蘇芳色の液体が揺らいだ。


「秋羅さん、おめでとう…」


もう何度目かわからないお祝いの言葉に、秋羅さんはくすっと笑う。


「何回言えば気が済むんだよ?」


その声は少し呆れてた色をしていて、だけど少し照れているみたいにも聞こえて、私もなんだか可笑しくなって小さく笑った。


「1年に1日だけしか祝えないんですから、何度でも言いますよ?」


悪戯っぽく微笑んで言葉を返した私の手から、秋羅さんがワイングラスを取り上げる。


「え…?」


テーブルの上にグラスが置かれて、私は秋羅さんに抱き寄せられた。


首筋に感じる吐息がくすぐったくて、私は小さく身動く。



「お祝いの言葉もプレゼントも、みのりから貰えるものなら何でもうれしいよ。ありがとう」



耳元で囁かれて私の体温がぐんっと上がる。


「もう…耳元で喋ったらくすぐったいです……」


恥ずかしさを誤魔化すように声をあげると、秋羅さんの腕が緩む。


近い距離で私を見つめる熱い視線にドクンッと心臓が音を立てた。


秋羅さんの指先が頬を撫でて、私の顎を軽く浮かせるとゆっくりと顔が近づいて止まる。



「…まだ貰ってないものがあるんだけど?」



言葉が終わると同時に、答えも聞かずに重なる唇。


触れるだけの優しいキスは、重ねるたびに深い交わりへと変化していく。


頬から耳朶にそこから滑るように首筋へと降りていく甘く優しい口づけに私は身を委ね、与えられる熱に身も心も溶かされ酔いしれる。


いつの間にかソファーに身を沈められ、強く優しい腕に包まれていた。


互いの熱を求め合い、指を絡め、深く交じり合ううちに私の意識は朦朧としていく。


意識を手放す瞬間に聞こえたのは甘い囁き…



「来年も再来年も…お前はずっと俺の隣にいろよ?」






-終-








→御礼文

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