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幸せを奏でる瞬間(とき)(5/6)




(そんな言い方…ずるいよ…)


甘ったるくて少し切ない声が、私の心を揺さぶる。


(対等なんてなれっこない…でも……そんなこと言われたら…甘えたくなっちゃうよ)





「……はる…」


思い切って、大切な…大好きな人の名前を紡ぐ。


その瞬間、目の前にあった顔が綻んで、私もつられて笑顔になる。


「…もう一回……」


「…は………っん…」


もう一度言いかけた名前は春の唇に塞がれた。


「もう…それじゃ言えな『…ほら、ちゃんと呼んで』」


「…はる…んんっ」


言葉を遮る悪戯な言葉とキスに、私は抵抗できないままその熱を受け入れる。


見つめ合いながら何度も唇を重ね、いつしかそれは深い交わりに変わっていく。


ふと気づけばソファーに身を沈められ、優しく躰をまさぐる大きな手と冷たくて熱い指先に翻弄されている私がいた。


「……みのり…」


私の名を呼ぶ低い声はとても甘くて、まるで媚薬のように囁かれるたび躰の奥をずくりと疼かせる。



「…愛してる……」



耳元に響く大好きな春の声はとても心地よくて、幸せな音色を奏でる不思議な楽器みたい。



「…は、春…」



ねぇ…貴方の名を呼ぶ私の声は、どんな風に聞こえるの?



春の耳に、甘く幸せな音で響いていたらいいな…





きつく抱きしめ合いながら春の腕の中で溺れる私は、声にならない声で何度も何度も春の名を呼び続けた。




―…はる、春っ


  ……私も、愛してる…





-終-









→御礼文

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