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幸せを奏でる瞬間(とき)(4/6)

カウンターに置いた2つのカップを手に神堂さんはソファーへ向かう。


なんとなくその後姿に見惚れていると、テーブルにカップを置いた神堂さんが振り返ってフッと優しい笑みを浮かべた。



「……おいで」



差し出された手と台詞に誘われて、神堂さんの隣に座ろうとしたところで手首を掴まれた。


「きゃっ」


不意に手を引かれてよろける私を更に引き寄せる力強い腕、気づいた時には私は神堂さんの膝の上に座っていた。


「ぁっ…ごめんなさいっ!」


まるでお姫様抱っこされているような体勢に慌てて立ち上がろうとする私を腕の中に閉じ込めて、神堂さんがくすっと笑った。


「…このままでいい。今から、プレゼント貰うから……」


耳に響いたのは、低く艶やかな…甘い声。


(プレゼントなんて用意してないよ…)


今回は用意できなかったと伝えたはずなのに…と私は困惑していた。


「あの…神堂さん?」


声を出した私の唇を一瞬だけ塞いで、唇が触れそうなほど近い距離で話し出す。



「…みのり…いつまで『神堂さん』って呼ぶつもり?」



不機嫌な色を含んだ声に、私の肩は小さく跳ね上がる。


至近距離で私を見つめる瞳は声とは裏腹に優しい色をしていた。



「…名前で呼んでくれないか…キミから貰うプレゼントはそれがいい…」



「えっと…は、はる……、さん…」



おずおずと呼び慣れない二文字を口にしたものの、恥ずかしさと緊張に負けて思わず言葉を付け足した。


たった二文字の大好きな人の名前は、口にしただけで私の心拍数を簡単に上げてしまう。


ドキドキと煩いくらいに騒ぎだした心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと、恥ずかしくて俯きそうな私の顎を神堂さんの指が捉えて再び唇を奪った。



「…『さん』はいらない……」


「む、無理ですっ」


「…敬語も禁止」


「…えっ!?」



驚く私の頬に伸びてきた指先は少し冷たくて、それなのに触れられた場所は焼けるように熱くてジリジリと胸まで焦がしていく。


切ない色を含んだ神堂さんの瞳が私の瞳を覗き込んだ。



「……みのり、せめて二人でいるときだけは…キミと対等でいたいんだ…」



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