trick or treat 〜JADE+〜(3/13)
ドレスの裾を踏まないようにそっと裾を持ち上げ気を付けながら入口につきドアを開けて、目の前の光景にびっくりした。
来た時には無かった紅い絨毯がスタジオの入口から目の前の車のドアまで続いていた。
しかも、その車はリムジンで。
ドアの所には見るからに『品のいい初老の執事』という感じの男性が立っていた。
あまりの予想外の光景に思わず呆然としてしまう。
「伊沢様、お待ちしておりました。会場までお送り致しますのでどうぞ」
広くて豪華な車内に、落ち着かず、思わずソワソワ。
(ま、まさか…本当に着くまで私だけなの?…)
芸能人になりJADEの皆さんとお仕事をする機会が増えたことで、
非日常に思える贅沢な場所に出る機会が増えたとは言うものの、
いくらなんでもいきなりドレスに赤絨毯で執事さんがいてリムジンに一人というのは、嬉しいけど心臓に悪いよ…
(も〜絶対今頃、冬馬さんは…多分秋羅さんとしてやったり♪とか言ってニヤニヤ笑ってるよね!)
教えてくれなかった事に、今更ながらにちょっぴり腹がたつ。
♪♪♪〜♪♪〜
その時……冬馬さんからのメールを知らせるメロディーだけの『I belive』がリムジンの車内に響いた。
『驚いた?あ〜あ〜どうせなら俺も綺麗なドレス着たみのりちゃんとリムジンで来たかったよTT……着くの楽しみに待ってるからね。
着いたらハードな撮影(仕事の鬼春サマ)が待ってるからさ、着くまでノンビリ楽しんでな』
(も〜冬馬さんてば)
絶妙なタイミングで来たメールにさっきまでのちょっぴりの苛立ちと不安がスッキリとなくなり、思わず 顔がほころぶ。
どこへ向かっているかは分からないけれど、
目的地には愛しい人と尊敬するアーティストであるJADEの皆さんとやりがいのある素敵な仕事が待っていると思うと、
不安は消え到着までこの状況を楽しもうという余裕が生まれたのだった。
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