そっくりさん(1/1)
ある日、縁側でくつろいでいた私はちょっとした空想に耽っていた
もし‥‥‥‥もし、ね?
みんなを『犬』に例えるとしたら、‥‥以蔵はやっぱりドーベルマンかな?
お茶の入った湯呑み茶碗を手に、思わず吹き出した
(だって、あの身のこなしとか目つきの鋭さとか、主人への忠誠心の強さとかもそっくりだよね?)
楽しくなってきた私の空想はどんどん膨らんでいく
「じゃあ龍馬さんは柴犬で、慎ちゃんは‥‥ポメラニアン!」
あれ、そうすると武市さんは何だろう?
レトリバー? ビーグル?
「‥‥うーん、何かしっくりこないなあ」
そこへ、庭で剣の稽古を終えたばかりの武市さんがやってきた
「はづきさん?そんなに難しい顔をして、一体どうしたんだい?」
「あ、武市さん‥‥っ!」
目を丸くして息を呑んだ私を見て、武市さんが首を傾げる
「?」
井戸端で汗を拭いた時に解いたらしい、武市さんの長い綺麗な髪が風になびいているその姿はまるで‥‥‥‥
「アフガンハウンド!」
「あ、あふっ‥‥!?」
ある日の寺田屋の、長閑なひと幕―
了
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