月下夢想(1/6)
神社での再会から一月
私は以蔵と一緒に、療養中の武市さんの元へとやって来ていた
柔らかな午後の日差しが差し込む縁側は、ぽかぽかしていて気持ちいい
(あ、お日様の匂いがする‥‥)
取り込んだばかりの大量の洗濯物を両手に抱えた私は、立ち止まって大きく息を吸い込んだ
と同時に以蔵の姿が思い浮かんで、思わずクスクスと笑ってしまう
「‥‥以蔵とおんなじだ」
「はづき? 何が同じだって?」
「えっ?」
ふいに聞こえてきた声に目を瞬かせていると、抱えていた洗濯物の塊の向こうから呆れ顔の以蔵が顔を覗かせた
「あ、以蔵!」
笑顔で名前を呼んだ私に、以蔵は大袈裟にため息をついて見せる
「まったく、山のような洗濯物が歩いて来たと思ったら‥‥いきなりはづきが笑い出すから何事かと思ったぞ」
「う‥‥」
口調は淡々としていたけれど、その口元は楽しそうに弧を描いていた
「もう、以蔵ってば!」
ぷうと頬を膨らませて、反論を試みるけれど
「ん? はづき、顔‥‥まん丸になってるぞ?」
更に笑みを深くした以蔵に即座に切り替えされてしまう
「‥‥っそんな事ないもん!」
「はははっ」
(もう‥‥‥)
―――――最近の以蔵は、こんな風に私をからかう事が多くなった
武市さんの容態が目に見えて良くなってくるのに安心したっていうのもあるんだろうけど
(そりゃあ、以蔵が笑ってくれるのは私も嬉しいけど、だからってからかわれっぱなしなのも悔しいんだよね‥‥)
複雑な心境で黙りこくった私の頭を、以蔵の大きな手がくしゃと撫でる
「おい、はづき‥‥」
その時――――
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