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光のどけき春の日に(1/3)



『はづきさんに、僕の髪を切ってほしいのだけれど』




発端は、武市さんのこの一言だった







縁側に腰を下ろして、真新しい隊服に身を包んだ武市さんが後ろにいる私を振り返る



「それじゃはづきさん、お願いしますね」



「は、はいっ!」




いつもと同じ、穏やかな笑顔を見せる武市さん



今の私は、そんな彼に対してぎこちなく笑い返すのが精一杯で




意を決して鋏を手にしたものの、私の体はまるで金縛りにでもあったみたいにぴくりとも動いてくれなかった



「‥‥‥武市さん」


「何か?」



きょとん、と首を傾げる武市さんは不思議そうな顔をしている



「あ、あの、本当に私でいいんですか?私、自分の髪だって自分で切った事ないんですよ?」


「ああ」


情けない声を出す私を見て、やっと得心がいった様に頷く



「大丈夫ですよ、僕ははづきさんの事を信頼していますから」



「武市さん‥‥」



思わずウルっときた私をよそに、武市さんは淡々と続ける




「でも、そうだな‥‥では髪を切ってもらう礼として〇〇屋の団子というのはどうでしょう」



「本当ですか!?」



その言葉に、私の顔がパッと輝いた



〇〇屋と言えば、甘味が美味しいと近頃京の町で評判になっているお店だ



私も長州藩邸へ行く時に、何度かお店の前を通った事がある



(そういえば‥‥‥)



現金なもので



店先に美味しそうな干菓子がたくさん並んでいたのを思い出したら、俄然やる気が湧いてきた



「武市さん!やります、私頑張ります!」



先生に指名された生徒よろしく、手を挙げて宣言する





しかし――――




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