伝える心、繋がる想い(1/4)
暦の上では既に春
けれど、まだ八つ時を少し回ったばかりだというのに、気の早い太陽はもうずいぶん西に傾いていた
それと同時に、凍てつくような寒さが京の町を包み込み始める
今日は2月14日
私がこの時代に来て初めて迎えたバレンタインデーは、すごく賑やかなひとときだった
そして今
中断していた会合が再開されて、席をはずした私は長州藩邸の広大な庭をのんびり散策していた‥‥‥‥のだけど
「うわっ、つめた‥‥!」
私は自分の手の冷たさに驚いて、思わず叫んでしまった
『温暖化』なんて言葉もまだないこの時代、京の町の寒さは半端じゃない
まだ庭に出てからそんなに時間は経っていないのに、いつの間にか冷たく冷えきった私の指先は、ビリビリと痺れ始めていた
しかも私が今いる所は、外部からの目隠しも兼ねて背の高い木ばかりが植えられているから、太陽の光もあまり差し込まない場所で
そこを通り抜ける風は、まるで氷みたいに冷えきっていたのだ
(うう、もっと厚い上着を着てくれば良かったなあ‥‥)
ちょっとだけ、と思って庭に出て来たのは失敗だったかも知れない
私が体を縮こませて、両手で自分の体を抱き締めようとした‥‥その時
「こりゃ、はづきさん?こんな所におったら風邪をひいてしまうぜよ?」
「え?」
後ろから聞き慣れた声がしたと思った瞬間、私の体を何か温かいものが包み込んだ
「‥‥‥‥龍馬さん!?」
声のする方を振り返ろうとしたけれど、何故か体の自由が利かない
私は慌てて自分の体を見下ろした
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