それもすべて愛ゆえに(1/3)
晋作さんが私の為に用意してくれた「お守り」の笛
お礼を言いに言った私に、晋作さんは『自分の嫁を守るのは男の義務だからな!』と笑った
「いいか、困った事があったらこの笛を吹け!どこにいたって俺が必ず駆けつけてやる!」
私が首から下げている笛を指差して言い切った晋作さんの笑顔は、まるで本物のお日様みたいにあったかくて
『私のためにあんなに一生懸命になってくれた人の笑顔を、もう二度と曇らせたくない』
心の底から、そう思った
だけどそれを素直に口にするのは恥ずかしくて、私はついつい可愛くない返事をしてしまう
「‥‥本当?」
「お?」
「晋作さん、本当に私がどこにいても駆けつけてくれるの?」
上目遣いで見上げると、晋作さんはニカッと笑って私の髪をグシャグシャと乱暴に掻き回した
「おう、もちろんだとも!任せとけ!」
「きゃっ!? や、やだっ!」
驚いた私が慌てて伸ばした手は、晋作さんにするりとかわされてしまう
「ははっ、はづきがあんまり可愛い顔をするからだ!」
「そんな事言ったって‥‥」
自分の顔なんて、自分じゃよく分からないし
だけど
(きっと今、私の顔‥‥真っ赤になってるんだろうな)
いつも翻弄されてばかりいるのが悔しくて、私は頬を膨らませて晋作さんの顔をキッと見上げた
「ははっ、はづきは照れてる顔も可愛いぞー!」
‥‥‥‥駄目だ、全然通じてないし
「だからこれは照れてるんじゃなくて‥‥って、晋作さん!?」
「何だ?」
気がつけば晋作さんのもう一方の手は私の腰に回されていて
そのままグイッと抱き寄せられた私は、自然と晋作さんの胸に密着する形になる
(うわ、近い‥‥!)
焦った私が手足をバタバタさせてみても、私を抱き寄せる手は一向に緩まない
それどころか、晋作さんは更に上機嫌に笑っていた
「こらはづき、そう暴れるな!‥‥‥‥ああ、でも、そうだな」
「え?」
その晋作さんが、不意に動きを止めた
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