紅に染まる恋心(2/3)
はら、はらり
私達が寄り添っている僅かな間にも、小さな赤い葉が周囲にいくつも舞い落ちてくる
その様子をしばらく眺めていた私は、やがて黙り込んで以来ぴくりとも動かない以蔵が気にかかった
「ねえ以蔵、そろそろ帰らないと皆心配してるよ?」
「ん?」
だが、息がかかるくらい近くで見つめ合った以蔵は、何とも言えない表情をしている
「皆、か‥‥‥はづきはこの状況でも奴らの心配をするんだな?」
「え?」
「先生はともかく、龍馬と慎太は放っておけ‥‥‥‥今、はづきの傍にいるのはこの俺だぞ」
「いぞ‥‥‥んっ」
その言葉と共に、一瞬私の唇に触れた温もりは――――
「以蔵? あの、今のって‥‥」
視線をさ迷わせて動揺する私とは逆に、以蔵は余裕の表情でニヤリと笑う
「何だ、はづき‥‥分からなかったのならもう一度してやろうか?」
「なっ!? もう、以蔵の意地悪‥‥‥‥きゃっ!!」
とっさに以蔵の腕から逃れようとしたけれど、逆に腕を引っ張られてまた抱き寄せられる
illustration: 4seasons palette/白夜様
そして抵抗する間もなく、また重ねられた唇―――
(以蔵‥‥‥)
思えば、想いが通じ合って以来、寺田屋の中でお互いに示し合わせた数回を除けば、こうして誰に気兼ねする必要のない、二人きりのの時間を過ごすのは初めてかもしれない
「んんっ‥‥あ、いぞ‥‥や‥‥‥あっ」
「はづき‥‥‥愛してる」
熱い吐息と共に囁かれる言葉が、私の心に火を点す
(以蔵、私も以蔵の事‥‥‥)
どんどん深く激しくなる以蔵の熱を受け止めながら、私はそっと以蔵の腕に身を任せた―――
―終―
⇒あとがき .
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