セーラー服的恋愛論(4/5)
「なるほど、はづきさんには『花より団子』、いや焼き芋という訳だね」
「あ、もう武市さんてば、またそんな意地悪言って‥‥」
「ふふ、本当の事だろう?」
「武市さん! もう、とにかく龍馬さん達が待ってるんですから、早く行きましょう?」
「―――――」
そう、充分に分かっていた筈なんだ
それなのに
この時の僕は、朱に染まった頬を膨らませて踵を返すはづきさんの華奢な腕を掴むのに、些かの躊躇いもなかった
「きゃっ、武市さ‥‥っ!?」
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illustration: パーティは何処に?/カナエ様
その笑顔を見れば、はづきさんが焼き芋を『皆と』するのを楽しみにしている事がよく分かる
だが
もし、もしも僕がはづきさんと二人で過ごしたいと願ったなら‥‥‥‥‥君は同じ様に喜んでくれるだろうか?
「はづきさん、これは皆には内緒‥‥‥僕達二人だけの秘密、だよ?」
「あ‥‥」
「もっとも、そんなに赤い顔をしていては、しばらくは皆の所には戻れないだろうけれどね‥‥‥‥え?」
わざと意地悪な口調で告げると、すぐに意志の強い瞳が真っ直ぐに僕を見上げてきた
「た、武市さんこそっ」
「ふふ、何かな?」
ああ、そうだ‥‥‥‥君は僕達をいっぺんに虜にしたほどの『はちきん』だったね
「私は、その‥‥‥は、初めてだったんですからね!」
「ほう、それは役得‥‥‥もしかしてはづきさんは嫌だった?」
「な‥‥‥‥っ!」
もうこれ以上は無理だというほど顔を赤くして唇を尖らせる様が愛らしくて、僕の口許も自然にほころんだ
「当事者の僕としては、ぜひはづきさんの本音を聞いておきたいんだけれど、駄目かな?」
「‥‥‥‥‥‥‥武市さん、狡いです」
「それも今更だよ?」
「と、とにかく! 不意打ちなんて反則です! だから‥‥」
『だからって謝ったりしないで、これからもずっと私の傍にいて下さいね?』
囁かれた言葉に答える声はなかった
ずっと焦がれていた柔らかな熱を、二人で分かち合う
やがて痺れを切らした龍馬達が乗り込んで来るまで
僕は愛しい華奢な温もりを壊さぬようにそっと、そっと抱きしめていた―――
―終―
⇒あとがき
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