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恋ひぞ積もりて(2/4)



一人でいたはずの部屋で返事が帰ってきた事に驚いた私が、背にしていた入り口を振り返ると。


「え、半平太さん!?」


今日は龍馬さんと出掛けて、明日までは戻らないと言っていたはずの半平太さんの姿がそこにあった。


「ただいま、はづき」


半平太さんは目を丸くしている私の前までやって来ると、片膝をついて私と目線を合わせる。


「ど、どうして‥‥」


「ああ、僕がどうして今ここにいるのかって事かな?」


コクコクとうなずく事しか出来ない私に半平太さんは優しく笑った。


「予定していたより早くに用事が終わってね‥‥予定通り宿泊していくよう先方にも勧められたんだが」


そこで言葉を切ると、左手で私の頬をそっと包み込む。


「半平太さん?」


―――今は、わずかな時間でもはづきと共に居たいからね―――


「‥‥‥‥‥‥っ!」


「ん?」


「あ、いえ‥‥あの‥‥‥‥」


至近距離からまっすぐに私を見つめる半平太さんの眼差しを意識して、私の胸が高鳴る。


その眼差しに耐えられなくなってうつむいた私は心の動揺そのままに、周囲に視線をさまよわせた。




(‥‥あれ?)


そんな私の視界の端に何か青い物があった気がして、私は一瞬考え込んだ。


(青い物って‥‥‥何だったっけ?)





「?」


恥ずかしがっていたかと思ったら今度は首をかしげている私に、半平太さんが訝しげな顔をする。


「はづき?」


そして彼が私の名前を呼んだその声に、私の頭の中を覆っていたもやがサアっと晴れた。


(半平太さんの着物だ!)


私は反射的に、今は私の斜め後ろにあるはずのそれを振り返った。


‥‥‥振り返ってしまったのだ。


.


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