伝える心、繋がる想い(3/4)
「他でもない龍馬さんから誕生日をお祝いしてもらえるなんて、嬉しくない訳ないじゃないですか!」
「‥‥ほうか?」
身を乗り出して力説する私を見て、龍馬さんが嬉しそうに『にしし』と笑う
つられて私も笑顔になった
だってこの時代は誕生日をお祝いする事も‥‥プレゼントだって、なかったはずなのに
(そういえば‥‥)
私の頭の中に、一月ほど前のある光景が浮かぶ
あの時は確か‥‥
(そうだ‥‥加奈ちゃんから去年のBDプレゼントにもらったコロンを龍馬さんに見せてあげたんだっけ)
「ほう、これが"ぷぜれんと"か!」
「龍馬さん‥‥‥プレゼント、です」
「およ?」
それは私にとっては、何気ない会話の一つだったのに
(龍馬さんは、ずっと覚えててくれたんだ‥‥)
手の中の簪をギュッと握り締める
(もう、龍馬さんには敵わないなあ)
ついさっきまで一人で寒さに震えていた私を、その笑顔で、優しさでこんなにもあったかく包んでくれる人
突然この時代に来てしまって戸惑う事も多かったけど
『龍馬さんと出会えて良かった』
その気持ちのままに広い胸に飛び込むと
「はづきさん!?」
龍馬さんの驚く声がした後で、その大きな腕がゆっくりと私の背に回される
やがて
痺れを切らして探しに来た以蔵にどやされるまで、私達はお互いの温もりを分け合っていたのだった
***
「珊瑚は確かに女性の護り石ではあるが、"さんご"というその響きから特にお産を控えた女性に好まれる石だぞ?」
「んなっ!?‥‥武市、おんし何故それを早う言わんのじゃ!さすがに、それはまだ早過ぎるじゃろ!」
「龍馬、お前という男は‥‥‥っ!」
寺田屋に帰った後
私が早速髪に挿した簪に気付いた武市さんの言葉に、龍馬さんが顔を真っ赤にして慌てふためいていたのは‥‥‥‥また別の話
―終―
⇒あとがき
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