伝える心、繋がる想い(2/4)
すると、私の肩に男物の―――龍馬さんの防寒用の上着が掛けられていて
そして私はその上着ごと、龍馬さんに抱きしめられていた
「本当に、はづきさんからは一時も目が離せんのう」
「‥‥‥‥っ!」
耳元で低く小さく囁かれるその声
相愛の仲だからこそ、効果は絶大だった
ようやく自分の今の状況を理解した私の顔が、瞬間湯沸かし機並に熱くなる
「おっ!?はづきさん、急にどうしたんじゃ?何ぞあったんか!?」
目を丸くして顔を覗き込んでくる龍馬さんに、私は力なく首を振る事しか出来なかった
***
「どうしても今日のうちに、はづきさんに渡したい物があったんでのう」
「渡したい物?」
抱きしめていた腕からやっと私を解放してくれた龍馬さんは、照れ臭そうに頬を掻いた
そして、懐から取り出した小さな包みをそっと私の手に握らせる
‥‥‥‥これは、袱紗?
私の手に載ってしまうくらいの小さな包み
柔らかな布地の上からそっと触れてみると、何か細長い物が包まれているらしかった
(‥‥何が入ってるんだろう?)
ワクワクとドキドキがごちゃまぜになった、何とも言えない気持ちで私が包みをほどいていくと―――
「あ‥‥っ」
出てきたのは、真っ赤な珊瑚の飾りがついた綺麗な簪だった
「今日は如月の14日‥‥はづきさんの誕生日、じゃろ?」
龍馬さんのその言葉に、私は目を見開く
そのままじっと簪を見つめる私に、龍馬さんの優しい眼差しが注がれる
「ずいぶん前に、珊瑚は女子にとっては比類亡き護りとなると聞きかじったのを思い出してな‥‥じゃが、ちくとありきたりじゃったかのう」
「そ、そんな事ないです!」
「うおっ!?」
龍馬さんがちょっとだけ自信なさそうに呟く声に、私は慌てて反論した
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