Gaku's Happy Birthday!『きみの心に触れさせて』(1/3)
カーテン越しに明るい光が差し込んで、薄暗い部屋の中に幾何学模様を写し出している。
その光に刺激されて、私はゆっくり目を開けた。
「ん、もう朝‥‥?」
しばらくボーッとその光を眺めていると、上掛けから出ていた自分の肩が冷たくなっているのに気がついた。
(うわ、まるで氷みたい‥‥)
室内とはいえ冬の朝の空気は冷たくて、私は慌ててベッドに潜り込む。
そのまましばらく微睡んでいると、すぐ隣でベッドが軋む音がした。
(あ‥‥)
目の前にあるのは、愛しい人の普段よりちょっとだけ幼く見える寝顔。
意志の強い、勝ち気な瞳も今は固く閉じられている。
額にかかる赤い髪にそっと触れてみると、整髪料も何もつけていない髪はさらさらと指の間をすり抜けていった。
私の顔に自然と笑みが浮かぶ。
今日は1月1日、雅楽の誕生日だ。
夕べの大晦日はトロイメライもテレビ局のカウントダウンライブに出演していて、帰宅出来たのは午前2時を回った頃だった。
一応、日付が変わった時に「誕生日おめでとう」とは言えたけれど。
――だけど、最近は二人とも本当に忙しかったから。
こんな些細な時間が、些細な事が、ものすごく愛しい。
「雅楽」
「‥‥‥‥ん」
小さい声で彼の名前を囁くと、雅楽はゆっくり目を開ける。
(あ、いけない‥‥起こしちゃったかな?)
けれど雅楽はまたすぐに目を閉じて規則正しい寝息を立て始めた。
ホッと息を吐いて、私は改めて雅楽の耳元に口を寄せる。
「それじゃ、誕生日のごちそう準備してくるからもう少しだけ待っててね」
「‥‥‥‥そんなに待ってられっかよ」
.
[←] [→] [back to top]
|