Musician | ナノ


陽の当たる場所〜Session.4〜(3/4)


すっかり龍に翻弄されてしまった私は、周囲に視線を走らせるうちにケーキが龍からまる見えになっているのに気付いて、パッと手を広げた



「おい?」



「その‥‥まだ完成してないんだから、だから龍はもうちょっとだけ向こうで待ってて?」



「何だそれ‥‥‥それこそ今更だろう?」



「う‥‥でもそれは‥‥今朝、なかなか起きられなかったからだし‥‥」



しどろもどろになりながら呟く私とは対照的に、龍はしれっとしたもので



「ああ、そういえばそうだったっけ?」



「‥‥‥もうっ!」



小さく吹き出した龍を頬を膨らませて見上げると、龍はその大きな手でぽんぽん、と私の頭を撫でてくれた



 illustration:
4seasons palette/白夜様






―――龍が予想した通り



夕べ、私はリビングのソファで寛いでいるうちに眠ってしまっていた



帰宅した龍は、そんな私を起こさないようにそっと寝室へ運んでくれたのだけど‥‥‥‥



「ちとせ」



「えっ?」



「ちとせは、こんな風に俺に抱きしめられて眠るのは嫌いか?」



「な‥‥‥きゃっ!?」



龍にグイっと腕を引き寄せられた勢いでカウンターの上に乗り出した私の肩を、龍の大きな手が包み込む



そのまま龍が顔を近付けてくるのに



「龍!? ま、待って!」



「嫌だ、待たない‥‥質問に答えないちとせが悪い」



「そんな‥‥‥んっ」





秋の陽射しに包まれたキッチンで、私達はそっと唇を重ねた―――








甘いキスに蕩けそうになりながら、すぐ近くにある龍の顔を見つめる






ねえ、気付いてる?


『あなたが傍にいてくれる』


ただそれだけで、私がこんなにも幸せになれる事




龍、お誕生日おめでとう


こうして龍の一番近くでお祝い出来る事が私の一番の幸せなの


ねえ?


龍も‥‥龍も、私と同じ気持ちでいてくれてるって自惚れてもいい?





―END―

⇒あとがき
.



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