Musician | ナノ


陽の当たる場所〜Session.3〜(3/4)



佐藤さんの言葉、俺の誘いに慌てていたちとせ



それから―――




「晋平、お前」



「ちとせちゃん、ただ龍に喜んで欲しくて一生懸命なんだろ? 可愛いじゃないか‥‥‥早いとこ、幸せにしてやれよ」



「‥‥‥‥‥」



俺の言葉を遮るように口を開いた晋平は、いつもと変わらない、穏やかな顔をしている



(口に出す気はないって事か‥‥)




隣に座る親友が、一旦こうと決めたら頑として譲らない強情な面がある事も、長い付き合いの間に学んでいた



(本当に憎らしいほどいい男だよ、お前は‥‥‥)




「お待たせしました」



そんな俺達の前に、相変わらず無表情のバーテンダーが静かにグラスを置いていった



 illustration:
4seasons palette/白夜様





カラン



俺のグラスの中で、溶けかけた氷が澄んだ音を立てて崩れていく



と同時に、自然と言葉が口をついて出た



「言われなくても、そうするさ」



「へえ、そう」



「‥‥‥おい」



「冗談だって‥‥龍のその堅物な所も、昔から変わらないよな」



「余計なお世話だ」



晋平と目が合って、どちらからともなく笑みを交わす



俺はちとせの笑顔を思い浮かべながら、グラスに口を付けた―――





―END―

⇒あとがき
.



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