Musician | ナノ


陽の当たる場所〜Session.2〜(4/6)



それから10分ほど経った頃



「皆、遅くなってゴメンね‥‥‥‥って、あれ?」



取材を終えて休憩室にやって来たちとせが、ぐるっと室内を見渡して首を傾げる



「ちとせ? 取材もう終わったのか? ずいぶん早かったな」



「あ、龍!」



声をかけると、ちとせは安心したように微笑んだ



パタパタと可愛らしい足音を立てながら、俺が腰を下ろしているソファの傍まで駆けてくる



「うん、前にも何度か受けた事ある雑誌だったから‥‥‥‥ねえ、龍?」



「ん?」



「その‥‥皆、どうかしたの?」



ちとせは休憩室の壁際で小さくなっている櫂、雅楽、瑠禾の3人を不思議そうに見遣る



「ああ」



俺の口元に、フッと意味深な笑みが浮かんだ




 illustration:
4seasons palette/白夜様






「さあ、どうしたんだろうな」



「龍‥‥?」



手にした缶をかざして笑う俺に、ちとせは不思議そうに目を瞬かせていた









軽口叩いて、時にはメンバー相手にふざけてみたり


『こんな自分も悪くない』


今なら素直にそう思える


息をひそめるように心を閉ざして生きてきた、昔の自分はもういない


今の俺の隣には、信頼出来る仲間と――――そしてちとせがいてくれるから


自分が作り上げた見えない壁は、いつの間にか消えていた





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